ビタミンのチョコット知識⑥
葉酸 パントテン酸 ビオチン
Ⅰ-6 葉酸(Folic acid)
食品中の葉酸は、小腸においてテトラヒドロ葉酸(FH4:Tetrahydrofolic acid)に変換されたあと、核酸合成酵素(TransformylaseやTransmethylaseなど)の補酵素として核酸(とくにDNA)の生成・修正に大きく関与します。また、正常な赤血球をつくるとき、ビタミンB12とともに協力し合って働きます。葉酸の不足は悪性貧血を引き起こします。
※葉酸はほうれん草から発見され、葉を意味するラテン語が”葉酸”のことばの由来です。
葉酸と構造が類似し、がんや関節リウマチ治療薬として繁用されているメトトレキサート(リウマトレックス)は、葉酸の作用に拮抗して薬効を示します。
そのため、副作用として葉酸欠乏症(貧血、骨粗しょう症、胃潰瘍、口内炎、肝機能障害など)を引き起こすことから、葉酸の同時投与が行われます。
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貧血はよく低血圧と混同されますが、症状は同じようでもその発症メカニズムは異なっています。
[貧血と低血圧]
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※ 妊娠した場合、多くの種類のビタミンとその量も多く取る必要があります。とくに、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のためには、妊娠を計画している女性は日頃から栄養のバランスなどに気を付けるとともに、葉酸の摂取が必要です。
動脈硬化も骨粗しょう症も加齢に伴って増える病気です。
葉酸は動脈硬化の危険因子ホモシステインをメチオニンに戻す反応に必須であり、動脈硬化の予防に重要な役割を担います。また、骨粗しょう症の発症にも関係していることがわかっています。
高齢者もしっかりと葉酸を摂取する必要があります。
さらに葉酸が不足すると消化器系の粘膜に障害が現われます。胃腸の粘膜では潰瘍を招き、口の粘膜では口内炎になります。粘膜は新陳代謝が活発なので、細胞の成長にかかわっている葉酸の働きは重要かつ不可欠です。
●欠乏症:貧血(巨赤芽球性貧血)、胃潰瘍、口内炎など
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◎多く含まれる食品:ほうれん草、豆類、イチゴ、豆類 など |
Ⅰ-7 パントテン酸(Pantothenic acid)
パントテン酸は Coenzyme A(CoA)を構成し、種々の酵素の補酵素として働きます。CoAは生体内で非常に多くの反応を行なう酵素(Acyl CoA synthetase やPyruvate dehydrogenaseなど)の補酵素として働いているので、パントテン酸は糖質、たんぱく質、脂質の代謝すべてに関して重要な役割を担っています。
※ パントテン酸は、副腎の働きを助けて、ホルモンがスムーズに合成されるように作用します。
パントテン酸の働きによって合成された副腎皮質ホルモン(糖質コルチコイド:Glucocorticoid)は、アクシデントやトラブルがあったとき、血液中の血糖値を上げて、すぐに対応します。
また、ビタミンCも副腎皮質ホルモンやストレスに対して働く副腎髄質ホルモンのひとつ、ノルアドレナリンの合成にかかわっています。
パントテン酸は、身体を守っている抗体の合成を助ける働きもしています。
日常生活の中では、細菌やウイルスなどのいろいろな外敵が絶えず体内に侵入しようとしていますが、抗体と免疫担当細胞との見事な連携プレーによって病気になるのを未然に防いでいます。このため、パントテン酸が不足してくると、免疫が低下して、身体の抵抗力がなくなり外敵の侵入を許してしまいます。
動脈硬化で問題になるコレステロールには、悪玉(LDLコレステロール)と善玉(HDLコレステロール)の2つのコレステロールがあります。悪玉コレステロールは、血管の内壁にコレステロールを付着させて血管を硬化させる作用があります。
一方、善玉コレステロールは、余分なコレステロールを取り除き、血管の中をきれいにする働きがあります。
そして、パントテン酸は、善玉コレステロールの生成を促すので、その結果、動脈硬化の病因である悪玉コレステロールが減り、動脈硬化を予防することになります。
パントテン酸は、紫外線による皮膚の炎症を抑えるので日焼け防止として働きます。また、やけどによる皮膚のただれや炎症を抑えるため、皮膚の回復を早める働きもあります。
欠乏症:成長停止、副腎障害、手足のしびれと灼熱感、消化管障害など(多くの食品に含まれるため欠乏症は起こりにくい)。
◎多く含まれる食品: レバー、納豆、牛乳、キノコ類など
Ⅰ-8 ビオチン(Biotin)
ビオチンはヒトでは生合成のできない必須ビタミンであり、多くのカルボキシラーゼ(Carboxylase:糖新生や脂肪酸の生合成、アミノ酸の代謝などにかかわっている酵素)の補酵素として働きます。
※ アミノ酸やブドウ糖のエネルギー生産過程で発生する疲労物質の乳酸は、肝臓で、まずピルビン酸へと変えられ、オキサロ酢酸まで変化します。さらに、ホスホエノールピルビン酸を経由、これからは解糖を逆行することにより再びブドウ糖に生合成されます。これを糖新生(Gluconeogenesis)といいます。ビオチンはピルビン酸からオキサロ酢酸へと変換される際に働く酵素(Pyruvate carboxylase )の補酵素として、その機能を補います。ビオチンが不足すると乳酸からの糖新生がスムーズに進まなくなり、筋肉痛や疲労感などといった症状がでてきます。
そして、ビオチンは核酸の生成にかかわる酵素の補酵素としても働き、細胞の増殖を促進させます。
また、ビオチンは皮膚や粘膜の機能維持を補助します。
さらに、卵白に含まれるアビジン(Avidin)というたんぱく質は、腸内でビオチンと結合して高分子の物質となるため、生卵を毎日たくさん食べる人にとっては空腸からのビオチンの吸収が妨げられるといった弊害があります。このため、生卵を大量に摂取するとビオチン不足に陥る可能性があります。通常、ビオチンは多くの食品に含まれるため欠乏症は起こりません。
● | 欠乏症:皮膚炎、脱毛、糖新生に支障が出て疲労感や 無気力、食欲不振、嘔吐など |
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◎多く含まれる食品:牛乳、豆類、トマト、卵黄、牛乳など
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