“ホルモン”のチョコット知識⑦
膵臓
Ⅵ.膵臓
膵臓(Pancreas)は胃の後方にあって横走し、十二指腸に開口している細長い器官です。その大きさは、長さ14~18cm、重さ70~100g、うすいピンク色をしています。.
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膵臓の中心部には左後腹壁から右後腹壁に向かって走っている膵管があります。
膵管は膵臓の分泌液(膵液)を運ぶ導管で、十二指腸内壁の乳頭のところに肝臓から出ている総胆管と一緒になって開いています。
そして、膵臓は1日に1ℓ以上の膵液をつくり出しています。
膵臓はヒトの体のなかでも、唯一、
外分泌腺と内分泌腺を併せ持つ大きな腺です。
1.外分泌機能(消化器…膵臓の約95%)
膵液には、糖質を消化するアミラーゼやたんぱく質を消化するトリプシン、脂質を消化するリパーゼ(ステアプシン)という消化酵素が含まれています。
[消化酵素の分泌器官]
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[三大栄養素の消化]
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2.内分泌機能(内分泌器…膵臓の約5%)
さらに膵臓内にはおよそ100万個のランゲルハンス島が散在しています。.
ランゲルハンス島の主な分泌細胞
A(α)細胞はホルモングルカゴンを産生分泌(島細胞の15~20%)し、
B(β)細胞はホルモンインスリンを産生分泌(島細胞の約75~80%),
D(δ)細胞はホルモンソマトスタチンを産生分泌(島細胞の約5%)、グルカゴンとインスリン、2つのホルモンの分泌量の微調整をおこないます。
[膵臓ランゲルハンス島イメージ図]
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グルカゴンは肝臓のグリコーゲンをブドウ糖に分解し、血液中に放出することにより血糖値を上昇させます。
また、
インスリンはブドウ糖からグリコーゲンの合成を促進したり、細胞でブドウ糖を分解してエネルギーとして出すことにより血糖を低下させます。
[血糖の調節 その1]
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血液中のブドウ糖つまり血糖は正常の場合ほぼ一定に保たれていますが、これは血糖調節ホルモンの働きによるものです。
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① 高血糖の場合
血糖量が増加すると直接あるいは間接に間脳で感知します。
間脳は延髄にある糖中枢を刺激し、迷走神経(副交感神経)を経由して膵臓のランゲルハンス島のB(β)細胞に作用、そこからインスリンを分泌させます。
インスリンは細胞におけるブドウ糖の消費(ATP産生)と肝臓や筋肉でのブドウ糖からグリコーゲンへの生成を促進することにより血糖を減少させます。
② 低血糖の場合
過度の運動や飢餓状態が続き血糖量が極端に減少すると、顔面の毛細血管が収縮して顔面蒼白、頻脈や瞳孔散大のような症状が現われます。
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これは低血糖を間脳を通じて糖中枢が感じとり、交感神経に興奮が伝わり副腎髄質を刺激し、アドレナリンを分泌させたために起こったものです。
アドレナリンは肝臓や筋肉に作用し、貯蔵されているグリコーゲンをブドウ糖に変えます。 そのため血糖量は増加します。
このときアドレナリンは脳下垂体をも同時に刺激するので、脳下垂体前葉から副腎皮質刺激ホルモンが分泌されます。
そして副腎皮質から糖質コルチコイドの分泌が起こり、グリコーゲンの糖化やアミノ酸そのほかからの糖新生が促進されて血糖量はさらに増加します。
このほか血糖値を上昇させるものとして膵臓のランゲルハンス島のA(α)細胞からのグルカゴン、脳下垂体前葉で作られている成長ホルモン、甲状腺からのチロキシンがあります。 .
➂ その他の血糖調節
Ⅰ. DPP-4阻害薬
その他の血糖を調節するホルモンとしてインクレチン (Incretin 食事摂取後に消化管の特定の細胞から分泌されるホルモンの総称)が知られています。食後、主に小腸上部のK細胞がブドウ糖に直接刺激されるとGIP(Gastric Inhibitory Polypeptide)ホルモンが、主に小腸下部のL細胞が食物摂取の際の神経刺激あるいはブドウ糖に直接刺激されるとGLP-1(Glucagon-Like Peptide-1)ホルモンが分泌されます。
インクレチンは血糖に応じて、とくに高血糖時に、膵臓ランゲルハンス島のβ細胞からのインスリンの分泌を促進し、α細胞からのグルカゴン放出を抑制して血糖を下げ、血糖値をコントロールするはたらきをします。
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[血糖の調節 その2](とくに高血糖のとき)
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しかし、インクレチンは小腸粘膜上皮細胞やリンパ球などの細胞表面あるいは血液中に広く存在している分解酵素のDPP-4(Dipeptidyl Peptidase-4)により速やかに不活性化されてしまいます。
これらのことから、インクレチンを不活性化するDPP-4を阻害(DPP-4阻害薬)すれば、インクレチンの作用により、安定した血糖を保つことができます。
つまりは、食事に関係なく服用しても、食後に高血糖や低血糖になりにくく、また体重増加につながる空腹感などの副作用も少ないとされ、一日中血糖をコントロ-ルすることができます。
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Ⅱ. SGLT2阻害薬
また、極々最近、新しいタイプの血糖を調節する糖尿病治療薬が開発発売されました。
腎臓は尿をつくる臓器ですが、腎臓で最初につくられる原尿にはブドウ糖やアミノ酸など、ヒトが必要とする栄養分がたくさん含まれています。.
[ネフロン=腎小体(糸球体+ボーマンのう)+尿細管]
原尿に含まれているこれらの栄養分や水分は、尿細管を通って腎盂にたどりつくまでに毛細血管内に再び吸収され(再吸収)、老廃物(尿素など)の溶け込んだ残りの水分が尿として輸尿管、膀胱を経て体外に排泄されます。
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人の尿からはブドウ糖は検出されないのが普通ですが、糖尿病のヒトでは血液中のブドウ糖濃度が高すぎるため、原尿に含まれるブドウ糖も多くなります。
そのため、ブドウ糖の再吸収を完全に行なうことができません。その結果として、尿からブドウ糖が検出されるようになるのです。(血糖値170mg/dℓ以上…..糖尿)
血液のブドウ糖濃度が高いと糖毒性として腎症や網膜症などの合併症を引き起こすことがあるので、糖尿病のヒトはどうしても「血糖値を下げる」必要があります。
「血糖値を下げる」にはインスリン導入もしくはインスリンのはたらきを強めたり、ブドウ糖の腸管からの吸収を抑えたり、運動によりブドウ糖の消費を促進したりするのが一般的です。.
腎臓におけるブドウ糖の再吸収はそのほとんどが近位尿細管で行なわれます。
この再吸収にはSGLT2(Sodium Glucose Transporter)と呼ばれるたんぱく質の輸送体がはたらいて、原尿に含まれているブドウ糖を血液中に運び入れます。
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糖の再吸収 SGLT2阻害薬服用
[血糖の調節 その3]
新しいタイプの糖尿病治療薬は、腎臓におけるブドウ糖の再吸収にかかわるこのSGLT2を阻害することにより、原尿中のブドウ糖が血液中に再吸収されるのを抑制します。
そして、血液中の過剰なブドウ糖を尿とともに体外に排泄させることにより、「血糖値を下げる」はたらをするのです。
このような、新しいタイプの糖尿病治療薬にも
1.浸透圧利尿作用がはたらいて、のどがかわく、頻尿、多尿がみられることがあります。
2.尿中へのブドウ糖排泄促進作用により、尿路感染症や性器感染症が発症するリスクがあります。
3.低血糖症状が認められることがあります。
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この度!地下足袋!リンクの旅へどうぞ~
詳しくは 花野井薬局 健康コラム ”なにをいまさら「糖尿病」”をご覧ください。
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