“ホルモン”のチョコット知識⑧ 精巣、卵巣
Ⅶ.精巣、卵巣
生殖機能を調節する一群のホルモンを性ホルモン(sex hormones)といいます。
性ホルモンはコレステロールから生合成され、副腎皮質ホルモンと同様にステロイドホルモンとも呼ばれます。
性ホルモンには.
アンドロゲン(androgen=雄性ホルモン)
・テストステロン(testosterone)
・デヒドロエピアンドロステロン(dehydroepiandrosterone:副腎皮質からも)
・アンドロステンジオン(androstenedione:副腎皮質からも)
エストロゲン(estrogen=卵胞ホルモン)
・エストロン(estrone)
・エストラジオール(estradiol)
・エストリオール(estriol)
プロゲステロン(progesterone=黄体ホルモン)
という作用の異なる3種類のホルモンがあります。.
アンドロゲンは主に精巣(睾丸)で産生・分泌され、雄性の二次性徴を発現させるとともに精子形成を促します。
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脳下垂体前葉から分泌される間質細胞(ライディヒ細胞 Leydig cell)刺激ホルモンの刺激を受けて、精巣からはアンドロゲンのうちテストステロンが分泌されます。.
テストステロンの作用
*性欲や性衝動の亢進
*記憶や集中力を上げる
*モチベーションアップ
*骨や筋肉の成長促進
*メタボリックシンドロームの予防
*精神安定
エストロゲンは卵胞刺激ホルモンの作用により卵巣にある卵胞から分泌され、雌性の二次性徴を発現させるとともに乳腺を発育させ、子宮内膜の肥厚を促します。
また、破骨細胞による骨吸収(骨から血液中にカルシウムが溶け出すこと)を抑制して、骨量を増加させます。
閉経後、エストロゲンの分泌量が急激に減少すると、骨吸収が異常に高まり、骨粗しょう症を起こす原因となります。
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プロゲステロンは、脳下垂体前葉から分泌される黄体形成ホルモンの刺激を受けて、排卵した卵胞の発達した黄体から分泌されます。
プロゲステロンは子宮内膜に受精卵が着床しやすい状態(妊娠の成立・維持)にします。
また、乳腺を成熟させ、流産を防止したり、黄体形成ホルモンの分泌を抑制し、排卵抑制作用を示します。
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[性周期と女性ホルモン]
増殖期
1.卵胞刺激ホルモンだけの作用で未成熟卵胞が発育をはじめ、エストロゲンが徐々に分泌されます。[日数:1~6]
2.卵胞刺激ホルモンに黄体形成ホルモンが加わって、卵胞の発育を促進させ、卵胞からのエストロゲンの分泌が盛んになって、その結果、子宮内膜の増殖がはじまります。[日数:6~10]
3.卵胞刺激ホルモンの分泌は減少しはじめるが、黄体形成ホルモンの分泌は増加し、卵胞は成熟。エストロゲンは増加し、子宮内膜は肥厚します。[日数:10~13].
排卵
4.卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンの比が一定の割合に達すると排卵が起こります。[日数:14]
分泌期
5.黄体形成ホルモンにより、卵胞は黄体へと変化しはじめます。
この黄体に黄体刺激ホルモンが作用し、黄体の発育を促進させると、黄体からプロゲステロンが分泌され、プロゲステロンは子宮内膜を卵子の着床に適した状態にします。[日数:14~20]
6.着床に最も適した状態。[22~25]
7.プロゲステロンが黄体刺激ホルモンや黄体形成ホルモンの作用を抑制し、黄体を退化させるとエストロゲンおよびプロゲステロンの分泌は急速に減少します。[日数:2~26]
8.子宮内膜は破れ、上部は血液とともに排泄されます。(月経)
エストロゲンの減少によって卵胞刺激ホルモンの産生が再び増加し、性周期が再開します。[日数:28~4]
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[妊娠と女性ホルモン]
妊娠
1.~5.
⑥.受精した卵子が着床する。[日数:22~25]
⑦.胎盤を形成し、胎盤から絨毛性性腺刺激ホルモンが分泌され、黄体を存続させます。
プロゲステロンの分泌は継続し、妊娠が持続します。
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[ 妊娠3カ月の胎児図 ]
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⑧.胎盤はエストロゲンをも分泌します。エストロゲンは子宮を保持し、脳下垂体前葉の卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモン、黄体刺激ホルモンの作用を抑制します。
⑨.絨毛性性腺刺激ホルモンは妊娠50~60日に最高に達し、80日で低い水準にもどります。
プロゲステロンは分娩直前に最高値に達し急激に減少。
エストロゲン は分娩直後に最高値に達し急激に減少。
⑩.オキシトシン(脳下垂体後葉)の作用により子宮収縮が起こり、分娩が開始されます。[日数:280]
⑪.分娩後はエストロゲンとプロゲステロンの分泌が急激に低下して、かわりに、プロラクチン(prolactin)の分泌が増加します。
プロラクチンは脳下垂体前葉から分泌され、妊娠中は乳腺を発育させ、出産後は乳汁の分泌を促します。.
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