“ホルモン”のチョコット知識⑩
その他の組織器官から分泌されるホルモン
Ⅸ.その他の組織器官から分泌されるホルモン
代表的な内分泌器官からだけではなく、その他の細胞組織器官からも 多くの
ホルモンが分泌され、そのホルモンも離れた部位の器官や細胞にさまざまな影響を与えます。
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胃
ガストリン(gastrin)、グレリン(ghrelin)
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[胃]
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ガストリン…主に幽門前庭部にあるG細胞から分泌され、胃体部の壁細胞を刺激して胃酸の分泌を促します。また、ペプシノーゲンの分泌促進や胃の運動を亢進させます。
グレリン …主に胃から分泌され、視床下部に作用して食欲を増進させます。また、脳下垂体に働いて成長ホルモンの分泌を促進。空腹時に分泌が亢進します。
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十二指腸・小腸
セクレチン(secretin)、コレシストキニン(cholecystokinin)、インクレチン(incretin)
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[十二指腸・小腸]
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セクレチン:胃内容物とともに入った胃酸が十二指腸を刺激すると、十二指腸や小腸上部に存在するS細胞からの分泌が亢進します。膵臓から重炭酸塩(主に炭酸水素ナトリウム)を分泌させて内容物を中和します。
コレシストキニン:十二指腸および小腸上部にあるI細胞から分泌され、胆汁酸分泌と膵液分泌を促します。
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インクレチン:インクレチンは高血糖時の膵臓β細胞のインスリン分泌を促進するホルモンの総称です。
GIP(Gastric Inhibitory Polypeptide グルコ-ス依存性インスリン分泌刺激ポリペプタイド)は小腸上部から分泌されます。
GLP-1(Glucagon-Like Peptide-1 グルカゴン様ペプタイド)は小腸下部から分泌されます。
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[インクレチンと血糖調節]
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食後、主に小腸上部のK細胞がブドウ糖に直接刺激されるとGIPホルモンが、主に小腸下部のL細胞が食物摂取の際の神経刺激あるいはブドウ糖に直接刺激されるとGLP-1ホルモンが分泌されます。
インクレチンは血糖に応じて、とくに高血糖時に、膵臓ランゲルハンス島のβ細胞からのインスリンの分泌を促進し、α細胞からのグルカゴン放出を抑制して血糖を下げ、血糖値をコントロールするはたらきをします。
しかし、インクレチンは小腸粘膜上皮細胞やリンパ球などの細胞表面あるいは血液中に広く存在している分解酵素のDPP-4(Dipeptidyl Peptidase-4)により速やかに不活性化されてしまいます。
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脂肪組織
アディポネクチン(adiponectin)、レプチン(leptin)
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[脂肪細胞]
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アディポネクチン:白色脂肪組織で合成分泌されます。骨格筋や肝細胞に作用してインスリン感受性を高め、脂肪を燃焼させ、血糖上昇時のエネルギー消費を亢進して糖新生を抑制します。血栓予防や動脈硬化予防の作用があります。
レプチン:白色脂肪組織で合成分泌されます。視床下部の摂食中枢に作用して食欲を抑制します。エネルギー消費を高め、体脂肪を消費します。
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腎臓
エリスロポエチン(erythropoietin)
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[腎臓]
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エリスロポエチン:酸素分圧低下時に腎臓から分泌され、骨髄に作用して赤血球の産生を促進。
腎不全者はエリスロポエチンの産生が障害されるので腎性貧血を起こします。
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胎盤
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin)
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[胎盤]
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ヒト絨毛性ゴナトトロピン:妊娠初期に胎盤から盛んに分泌され、黄体に作用してエストロゲン、プロゲステロンの分泌を促進させます。尿中に排泄されるため、妊娠検査に用いられます。
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心臓
心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)
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[心臓]
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心房性ナトリウム利尿ペプチド:心房から分泌され、末梢血管を弛緩させ血圧を低下させます。腎臓での利尿作用、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系の抑制などの多彩な生理作用を介して、血圧調整と生体の体液バランスに関与しています。
脳性ナトリウム利尿ペプチド:心室から分泌され、血管拡張、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系の抑制、利尿作用などを示します。心不全などの病態を改善させます。
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