ミネラルのチョコット知識⑥
クロム、モリブデン、マンガン
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Ⅴ) クロム(Cr)とモリブデン(Mo)とマンガン(Mn)
クロム(Chromium)は生体内のあらゆる組織にごく微量存在しています。血糖調節ホルモンのインスリン(Insulin)の働きをサポートし、糖質や脂質の代謝にかかわっています。
インスリンは膵臓のランゲルハンス島のβ細胞から分泌されます。
インスリンは、細胞におけるブドウ糖の消費(ATP産生)と肝臓や筋肉でのブドウ糖からグリコーゲンへの生成を促進することにより血糖を減少させます。
[ 解糖系・TCAサイクルと三大栄養素]
インスリンの働きが悪ければ血液中の糖を細胞に取り込んで利用することができません。
クロムはこのインスリンの働きを助けます。また、
クロムは脂質の代謝も活発にすることが知られ、血液中の中性脂肪やコレステロールの量を適正に保つのにも役立っています。
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詳しくは 花野井薬局 健康コラム ”なにをいまさら「糖尿病」”をご覧ください。
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◎過剰
過剰摂取によって健康障害がでることはありません
◎欠乏
必要量が微量のため、普通の食事で不足することはありません。
◎クロムを多く含む食品
はまぐり、レバー、ハム、あさり など
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モリブデン(Molybdenum)は体内には成人で体重1kgあたり約0.1mg含まれていて、骨や皮膚、肝臓、腎臓に多く分布しています。
Ⅰ. モリブデンはキサンチンオキシダーゼ(Xanthine oxidase)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(Aldehyde dehydrogenase)および亜硫酸酸化酵素(Sulfite oxidase)の構成成分です。
a. キサンチンオキシダーゼはプリン塩基代謝における尿酸合成にかかわり、この酵素の働きが強くなると、痛風になるおそれがあります。
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詳しくは 花野井薬局 健康コラム”なにをいまさら「痛風」”をご覧ください。
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b. アルデヒドデヒドロゲナーゼはアルデヒドを酸化してカルボン酸にする反応を触媒する酵素です。この酵素はエチルアルコールの代謝に必須の酵素で、代謝産物の酢酸は体内でエネルギー源として利用されます。
中間代謝産物のアセトアルデヒドは有害な物質で、”二日酔いのもと”といわれています。アルデヒドデヒドロゲナーゼの少ない人は、いつまでもアセトアルデヒドが体内に残っていて苦しむことになります。お酒に弱い人です。
さらに、メチルアルコールを誤って飲んだ場合、メチルアルコールは酸化されてホルムアルデヒドからギ酸を経てCO2と水になります。
このホルムアルデヒドもギ酸も強い毒性をもっています。ホルムアルデヒドはシックハウス症候群の原因といわれ、生命の機能をつかさどるたんぱく質を硬化変性させます。ホルムアルデヒドの30%水溶液は生物標本をつくるときに使うホルマリンです。
メチルアルコール中毒として、目の網膜損傷による失明がよく知られています。
目の網膜ではレチネン(ビタミンAのアルデヒド型)とオプシン(たんぱく質)とからロドプシン(視紅)を合成して暗順応に備えています。
レチネンは消耗するので、不足した分はレチノール(ビタミンAのアルコール型)を酸化して補います。
このため、網膜にはレチノールをレチネンに酸化するためのアルコールデヒドロゲナーゼやレチネンを酸化するアルデヒドデヒドロゲナーゼが豊富に存在しています。
[暗順応]
ここに、誤飲したメチルアルコールが血液で運ばれてくると、アルコールデヒドロゲナーゼによりメチルアルコールから大量のホルムアルデヒドがつくられます。このホルムアルデヒドの毒性で視細胞が硬化変性を起こして失明することになります。
または、ホルムアルデヒドが酸化されてできたギ酸が、ミトコンドリア内の電子伝達系にかかわるチトクロームオキシダーゼを阻害するためにギ酸の視神経毒性が現われて失明する、ともいわれています。
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詳しくは 花野井薬局 プライベートノート”ビタミンのチョコット知識「ビタミンA」”
をご覧ください。
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C. 亜硫酸酸化酵素は毒性のある亜硫酸イオンを毒性の低い硫酸イオンに変換します。
Ⅱ. モリブデンは造血にもかかわっています。鉄の利用をたかめて鉄欠乏性貧血を防ぎます。また、モリブデンには毒性のある亜硝酸塩を解毒する作用ももっています。
◎過剰
過剰分は尿中に排泄されるので、日常の食生活のなかで害が現われることはありません。
◎欠乏
通常、欠乏症が出ることはありません。
◎モリブデンを多く含む食品
牛乳、豆、玄米ご飯 など
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マンガン(Manganese)は、ヒトでは体内に成人で12~20mg存在していて、骨中や肝臓、膵臓、腎臓など生体内の組織や内臓にほぼ一様に含まれています。
マンガンの生体内での働き
Ⅰ. 骨の形成にかかわっています
マンガンは骨の成分のコラーゲンにリン酸カルシウムの沈着を促進するため、骨の石灰化には必要なミネラルです。とくに、子どもの成長期には不可欠の栄養素です。
亜鉛 マンガン 銅
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Ⅱ. 体の酸化を防ぐ働きをします
細胞のミトコンドリア内では酸素と栄養分とからエネルギー(ATP)をつくっています。酸素が燃えれば有害な活性酸素が発生します。このため、ミトコンドリア内では絶えず抗酸化として働く強力な活性酸素除去酵素スーパーオキシドディスムターゼ(SOD:Superoxide dismutase)を生成して活性酸素を中和しています。マンガンはこのSODの重要な構成成分です。
[エネルギー産生メカニズム]
Ⅲ. 尿素の合成にかかわっています
マンガンは尿素の合成に関与している尿素サイクルの中の酵素アルギナーゼ(Arginase)を活性化します。活性化されたアルギナーゼはアルギニンを加水分解してオルニチンと尿素を生成します。
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結局! 薬局! 花野井薬局!
アミノ酸の分解でできた有毒なアンモニアは、肝臓の尿素サイクルで毒性のほとんどない尿素につくり変えられて、腎臓から排泄されます。
アミノ酸 =R-CH(NH2)COOH
二酸化炭素 =CO2
アンモニア =NH3
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Ⅳ. その他
マンガンは、代謝を正常に保つ甲状腺ホルモンや生殖に必要なホルモン、血液凝固因子、インスリンなどの生成にも不可欠のミネラルです。
◎過剰
日常の食生活のなかで摂取し過ぎにより健康上、害が現われることはありません。
◎欠乏
植物性食品に広く含まれているので、欠乏することはありません。
◎マンガンを多く含む食品
玄米ご飯、海苔、しじみ、納豆 など
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