主な病原微生物
47.化膿性レンサ球菌 48.肺炎レンサ球菌
主な病原微生物
♯主な細菌
[G(+):グラム陽性 G(ー):グラム陰性]
胞子(芽胞)
G(+)球菌
47.化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)
48.肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)
47.化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)
[特徴]
レンサ球菌(Streptococcus)は、2μmあるいはそれ以下の小球菌か双球菌が、連鎖状に配列する通性嫌気性グラム陽性球菌です。
溶血性から、①α溶血性レンサ球菌(α-hemolytic Streptcoccci)、②β溶血性レンサ球菌(β-hemolytic Streptcoccci)、③非溶血性レンサ球菌(γ-hemolytic streptcoccci)に分けられます。また、
細胞壁多糖体の抗原性から血清学的にA~V群(I,Jを除く)に分類されています。
[レンサ球菌のイメージ図]
レンサ球菌は,咽頭炎,肺炎,創傷および皮膚感染症,敗血症,心内膜炎など,多くの疾患を引き起こしますが症状は感染臓器により異なります。
続発症としてリウマチ熱と糸球体腎炎などがあります。
化膿性レンサ球菌は、A群 β溶血性、大きさが0.5~1.0μmの小球菌で、莢膜をもつ、バシトラシンに感受性のある病原菌です。
化膿性レンサ球菌は溶血毒(hemolysin)として、ストレプトリジンO(streptolysinO :SLO)とストレプトリジンS(streptolysinS :SLS)、発熱毒素(streptococcal pyrogenic exotoxin)を産生します。
◎咽頭炎
化膿性レンサ球菌は、飛沫などを介して経気道的に感染し、2~3日の潜伏期間を経て発症し、発熱、咽頭痛、咽頭および扁桃の腫脹、リンパ腫脹などを呈します。
中耳炎、副鼻腔炎、扁桃周囲膿瘍、敗血症などの化膿性合併症や猩紅熱、レンサ球菌性毒素性ショック症候群などの毒素性合併症、さらに、リウマチ熱、急性糸球体腎炎などの非化膿性合併症の原因となります。
◎猩紅熱
咽頭炎・扁桃炎に全身性の皮膚発疹を伴う猩紅熱の原因菌は化膿性レンサ球菌です。
頸部・上胸部から始まり全身の皮膚に紅斑を生じます。
紅斑の発生は化膿性レンサ球菌の出す発熱毒素によるもので、皮膚全体が発赤して鮮紅色となります。
発疹は手掌と足底、口・鼻翼周囲に認めません。
口腔内所見では咽頭炎、扁桃炎症状に加え、イチゴ舌がみられます。
発症から3~4日後、解熱とともに発疹は消退します。
その後、落屑し、2~3週間で軽快します。
◎伝染性膿痂疹(とびひ)、◎蜂窩織炎(蜂巣炎)
化膿性レンサ球菌が皮膚の小さな傷から入ると、化膿性膿疱性病変が現われる化膿性皮膚炎の原因となります。また、
化膿性レンサ球菌が皮下組織に侵入すると蜂窩織炎を起こします。
◎急性糸球体腎炎
咽頭炎や膿痂疹に続発します。
化膿性レンサ球菌(抗原)に対して産生された抗体が抗原と結合し、さらに補体が結合した免疫複合体が血流にのって腎臓の糸球体基底膜に沈着するため、免疫反応によって糸球体が障害を受ける、と考えられています。
◎リウマチ熱
咽頭炎などに続発します。
化膿性レンサ球菌の産生する溶血毒ストレプトリジンは抗原性が強いため、化膿性レンサ球菌感染症の血液中にはストレプトリジン-O抗体(ASLO: Anti-Streptolysin-O)が多数つくられます。
リウマチ熱は、この抗体(ASLO)が化膿性レンサ球菌の溶血毒(SLO)と間違えて関節や血管壁、心筋などに対して免疫反応(からだに有害な異物と勘違いして関節や心筋などを攻撃)を起こすことにより発症するものと考えられています。
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心臓の炎症を引き起こすリウマチ熱とは?
リウマチ熱は、かぜ症状(とくに化膿性レンサ球菌を病原体とする咽頭炎など)の後、1~3週間で高熱が出て、関節炎やそれにともなう関節痛、倦怠感、腕の関節あたりにできる皮下結節、手足の皮膚に輪状紅斑などが現われるのが特徴です。
また、手足が勝手に動く舞踏病症状のほか息切れや動悸をともなう心臓の炎症も引き起こします。
この時点ですでに心内膜炎や心筋炎が発症しており、抗生剤による積極的な治療のない場合には心臓弁膜症へと進みます。
関節炎や心臓の炎症は、化膿性レンサ球菌と戦うためにつくられる抗体(ASLO)が化膿性レンサ球菌の出す溶血毒(SLO)と間違えて関節や心筋に対して免疫反応を起こしてしまうこと(からだに有害な異物と勘違いして関節や心筋を攻撃)により生じるものと考えられています。
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◎劇症型溶血性レンサ球菌感染症
筋肉の組織を壊死させることから「人食いバクテリア」とも呼ばれる劇症型溶血性レンサ球菌感染症の原因となるのは、主に、化膿性レンサ球菌といわれています。
中高年や糖尿病患者などの易感染性宿主において、化膿性レンサ球菌の局所感染(咽頭炎や外傷からの皮膚感染など)から発症します。
発症すると急速に進行、数時間で重症化して予後不良、死に至ることもあります。
症状としては、まず、手足の腫れや発赤、激痛などが現われ、高熱を伴います。
腫れは数時間でさらに広がり、筋肉を覆う筋膜の壊死(軟部組織の壊死)を起こします。
菌が全身に広がると、敗血症性ショック、多臓器不全などを引き起こし、数十時間で死亡することもあり、致死率は30%にも上るとのことです。
治療にはペニシリン系の抗生剤が効きますが、菌が全身に回る前の早い段階での使用をすすめています。
48.肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)
[特徴]
肺炎レンサ球菌は肺炎などの呼吸器の感染症や中耳炎、髄膜炎などの全身性感染症を引き起こす細菌(α溶血性)です。とくに、
学童期以降の細菌性髄膜炎の原因菌に、また、乳児気管支肺炎の原因菌にもなります。
双球菌(Diplococci)で免疫機能の働きにくい莢膜を有しています。
◎肺炎レンサ球菌(肺炎双球菌)が起こす感染症
基礎疾患のない成人が日常的にかかる肺炎の原因菌としては、肺炎レンサ球菌が一番多いといわれています。
インフルエンザ感染後や高齢者、慢性呼吸器疾患を有する患者の感染など、上気道炎に引き続き、悪寒戦慄を伴う高熱で発症し、咳嗽がみられ、鉄さび色の膿性痰や胸痛などが出現します。
易感染性宿主では、しばしば重症化し敗血症や髄膜炎を合併する場合があります。
肺炎で亡くなる方の約95%が65歳以上であることから、とくに、高齢者では肺炎レンサ球菌による肺炎などを予防することが重要です。
2014年10月から「肺炎球菌ワクチン」による、高齢者の肺炎球菌感染症の定期接種の制度がはじまりました。
[治療」
高用量ペニシリン系(アンピシリン、ペニシリンGなど)がファーストチョイス。
高齢者や慢性呼吸器疾患を有する患者、ペニシリン耐性肺炎球菌感染の場合はニューキノロン系抗菌薬(ジェニナック、アベロックス、グレースビット、クラビット、オゼックスなど)を選択します。
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