主な病原微生物
66.コレラ菌 67.腸炎ビブリオ
主な病原微生物
♯主な細菌
G(ー)桿菌
Ⅱ.ビブリオ科(Vibrionaceae)
海、河川、湖沼などの水系環境に生息しています。
湾曲(コンマ状)グラム陰性通性嫌気性桿菌です。
ヒトに病原性を示すものはビブリオ属に多く、
鞭毛があり、活発な活動性を有します。
ビブリオ属(Vbrio)
66.コレラ菌(Vibrio cholerae)
67.腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)
66.コレラ菌(Vibrio cholerae)
[特徴]
ビブリオ属コレラ菌は、大きさ1.5~2.0x0.5μmのグラムグラム陰性通性嫌気性、コンマ状またはバナナ状の桿菌で一端に単毛の鞭毛があり、活発な運動性を示します。
[コレラ菌のイメージ図]
コレラ菌はコレラ毒素(CT:cholera toxin)を産生し、その毒素によって激しい下痢を主症状とするコレラの原因菌です。
コレラ菌は酸性環境に弱く、胃酸により殺菌されるため、胃切除者や胃酸分泌抑制薬服用者、高齢者はコレラに感染しやすく、また、重症化もしやすい。
コレラ菌は水環境、とくに、河口に生存、そこで増殖します。
◎コレラ
コレラは、加熱不十分の魚介類や汚染された水を介して経口感染します。
感染後1~3日で、発熱や腹痛を伴わない、突然の水様性下痢と嘔吐によって発症します。
コレラ菌が小腸に達し、腸管粘膜上皮細胞に定着して増殖すると、コレラ毒素を産生し、腸管内に多量の水分と電解質を漏出させます。
激しい下痢は頻回、大量になり、米のとぎ汁様を呈します。 その結果、
脱水症状をきたします。
重い脱水症になると、循環障害を起こし、死亡することもあります。
高度の脱水ではコレラ顔貌(眼球陥凹、頬骨・鼻梁突出)や洗濯婦の手(指先の皮膚に深いしわ)がみられます。
[治療]
治療は、脱水症に対する対症療法が中心です。
軽症のときは経口補水液の投与、重症の場合はK+を含む輸液の大量静注が行なわれます。
下痢や排菌期間の短縮のため、抗菌薬は、テトラサイクリン系やニューキノロン系などが用いられます。
67.腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)
[特徴]
腸炎ビブリオは、通性嫌気性グラム陰性桿菌で、単鞭毛をもち、活発に運動します。
沿岸域から河口域を中心とした水域の海水中に生息し、発育に食塩を必要とするため、病原性好塩菌(NaClがないと増殖不可能な細菌)とも呼ばれます。
腸炎ビブリオは、10℃以下では増殖できず、また熱にも弱いため、食品の冷蔵保存や十分な加熱処理によって感染予防が可能です。
腸炎ビブリオは、小腸の粘膜上皮に定着し、増殖するとき、耐熱性溶血毒(thermostable direct homolysin:TDH)と呼ばれる毒素を産生します。
この毒素の作用によって腸管上皮細胞が破壊され、腸管内へ粘液、血液が漏出して粘血便性下痢を引き起こします。
◎腸炎ビブリオ食中毒
腸炎ビブリオに汚染された魚介類を生食したり、魚介類の調理で汚染された調理器具を介して野菜などが汚染され、その野菜などを生食すると感染し、感染型の食中毒を起こします。
腸炎ビブリオ汚染食品の経口摂取後、6~24時間の潜伏期を経て発症し、水様性下痢、激しい腹痛、嘔吐、発熱などの症状が出現しますが、多くは数日で自然治癒します。
例年、腸炎ビブリオは大腸菌やサルモネラ菌などと並んで多数の食中毒の感染者を出しています。
[治療]
治療は脱水症に対して、輸液を行なうとともに、ニューキノロン系やテトラサイクリン系抗菌剤を使用することもあります。
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