主な病原菌微生物
68.カンピロバクター・ジェジュニ
69.ヘリコバクター・ピロリ菌
主な病原微生物
♯主な細菌
G(ー)桿菌
カンピロバクター(Campylobacter) 属
68.カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)
ヘリコバクター(Helicobacter)属
69.ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobacter pylori)
グラム陰性桿菌の中には菌体がねじれたものがあり、らせん菌(Spiral bacteria)と呼ばれています。
[らせん菌のねじれの比較]
らせん菌に含まれるカンピロバクター属とヘリコバクター属は ビブリオ属より菌体が長く、ねじれも多いがスピロヘータ属よりは短く、菌体はコルクの栓抜き様の運動をしながら泳ぎ、消化管の粘膜など粘度の高い環境に適応しています。
68.カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)
[特徴]
カンピロバクター属カンピロバクター・ジェジュニはグラム陰性微好気性、1~数回ねじれているらせん状桿菌で、鞭毛を一本もち、運動性を有します。
家畜の腸管に高率に生息しているため、感染源は、調理の不十分な鶏肉、豚肉や動物糞便、汚染された牛乳、飲料水などです。
カンピロバクター・ジェジュニは、ヒトに急性胃腸炎(カンピロバクター腸炎)を起こす感染型食中毒菌の一つです。
少数の菌で感染が成立し、腸管上皮細胞内に侵入後、増殖して細胞を破壊します。
増殖に時間がかかるため、サルモネラ症などの食中毒と比べ、長い潜伏期となることが特徴です。
この菌に汚染された食物を介して感染し、1~7日の潜伏期を経て、下痢、腹痛、発熱、全身倦怠感などを呈し、ときに嘔吐、血便を伴います。
下痢は水様性であったり、泥状で膿、粘液、血液が混じることがあります。
[治療]
治療は対症療法で軽快する例が、また、抗菌剤を使用する場合はエリスロマイシン系、ニューキノロン系などが有効です。
69.ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobacter pylori)
[特徴]
ヘリコバクター・ピロリ菌は鞭毛をもったグラム陰性微好気性らせん状桿菌です。
ヘリコバクターピロリ菌の感染によって急性胃炎や慢性活動性胃炎を発症し、放置すると胃潰瘍や十二指腸潰瘍を引き起こします。
さらに胃がんの原因にもなると考えられています。
ヘリコバクター・ピロリ菌はピロリ菌のもつ強力な酵素ウレアーゼ(Urease)によって胃壁にある尿素CO(NH2)2 を加水分解して二酸化炭素 CO2 とアンモニア NH3に変えてしまいます。そして、
このアンモニアで胃酸を中和してピロリ菌のまわりのpHをほぼ中性に保つことにより、ピロリ菌は胃酸の強酸性から身を守り、生き続けることができるのです。そして、
胃粘膜に感染・定着・生息して胃・十二指腸潰瘍などの発生や再発に関与します。これは、
ヘリコバクター・ピロリ菌の産生する空胞化致死毒素(vacuolating cytotoxin)が胃の細胞などに空胞を形成させ、細胞死を起こさせることによります。また、
最近の話題として、悪性リンパ種の一つ「胃MALTリンパ腫」の7~8割はピロリ菌の除菌で改善するといわれ、また、血液の難病「特発性血小板減少性紫斑病(ITP)」の治療にもピロリ菌の除菌が有効とされています。
[治療]
ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌には、プロトンポンプ阻害剤(PPI)とアモキシシリン、クラリスロマイシンの3剤併用療法を行ないます。
ー10ー