主な病原微生物
㉔アデノウイルス ㉕ ヒトパルボウイルスB19
㉖ ポリオウイルス ㉗コクサッキーウイルス
主な病原微生物
ウイルス
㉔アデノウイルス(Adenovirus)
㉕ ヒトパルボウイルスB19(Human parvovirusB19)
㉖ポリオウイルス(Poliovirus)
㉗コクサッキーウイルス(Coxsackie virus)
マイコプラズマ、リケッチア、クラミジアは細菌とウイルスの中間体ですが、
細胞をもち、DNAが遺伝情報の担体なので「細菌」に分類されています。
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㉔アデノウイルス(Adenovirus)
[特徴]
アデノウイルス(DNAウイルス)は2本鎖線状のDNAを包むカプシドはあるのですが、エンベロープはもっていません。
飛沫や接触により上気道や眼の粘膜に感染すると増殖を始めます。また、
一部が飲み込まれて小腸に達すると、ここでも増殖し食中毒を起こします。そして、糞便に排泄されます。
さらに、リンパ節に侵入し、そこで増殖するとリンパ節腫脹をきたします。
アデノウイルスは咽頭結膜熱(プール熱)や急性熱性咽頭炎、流行性角結膜炎などをも起こす原因ウイルスです。
*咽頭結膜熱(プール熱:Pharyngoconjunctival fever)
夏季を中心に流行する急性のアデノウイルスによる咽頭炎に結膜炎を伴う感染症です。
発熱やのどの痛み、結膜充血、倦怠感、目脂などが主な症状です。
プールで感染することもあるのでプール熱と呼ばれていますが、多くは発病者の飛沫による感染と手指を介した接触感染です。
潜伏期間は5~7日で、急な発熱で発症し、咽頭炎によるのどの痛みが現われます。また、
特異的治療法がないので、熱や痛み、結膜炎などの症状に応じた対症療法が中心となります。とくに、
水分と栄養の補給には充分な注意が必要です。
*急性熱性咽頭炎
乳幼児の上気道炎の原因の1つで、咽頭の発赤と腫脹、頚部リンパ節の腫大を伴います。
*流行性角結膜炎
結膜炎から眼の充血、眼の痛み、眼瞼浮腫、眼脂、羞明、なみだ目を伴って発症し、角膜炎を起こします。
重症化すると視力障害を残すこともあります。
[治療]
治療は対症療法が主となります。
㉕ヒトパルボウイルス(Human parvovirusB19)
[特徴]
ヒトパルボウイルスB19(DNAウイルス)はきわめて小さく(直径20nm前後)、1本鎖のDNAをもち、エンベロープはもっていません。
伝染性紅斑などを起こす病原体です。
*伝染性紅斑(リンゴ病:Slapped Cheek Syndrome)
発病者の飛沫による感染や手指を介した接触感染後7~10日の潜伏期間を経て発熱、軽いかぜ様症状を示します。
その症状の消失後、発疹(両頬の発赤、四肢・体幹の網目状の紅斑)が現われます。.
小児に多い良性伝染性の急性丘疹性発疹症です。
成人では多発性関節痛(post-infectious polyarthralgia)を起こします。
予防法はとくにありません。
[治療]
治療は、各種症状を和らげる対症療法が中心となります。
㉖ポリオウイルス(Poliovirus)
[特徴]
ポリオウイルス(RNAウイルス)は急性灰白髄炎(ポリオ)の原因ウイルスです。
経口感染で侵入したポリオウイルスは腸管で増殖し、リンパ節を経て、血中に入り、中枢神経系に達します。
発熱、倦怠感、頭痛、嘔吐、頸部・背部硬直などの髄膜刺激症状を特徴しますが、重症では下肢の麻痺などが現われます。
ポリオウイルス感染のほとんどが不顕性で、急性灰白髄炎の発症は0.1%程度とされています。
[予防]
経口ポリオワクチン(不活化ワクチン)の接種により予防可能です。
㉗コクサッキーウイルス(Coxsackie virus)
[特徴]
コクサッキーウイルス(RNAウイルス)は生物学的性状によりA群とB群に分けられ、それぞれに多くの血清型(A群:24型、B群:6型)があります。
コクサッキーウイルスはヘルパンギーナ(Herpangina)や手足口病(Hand,foot and mouth disease)などを引き起こす病原体です。
*ヘルパンギーナ
突然の発熱と口腔粘膜にあらわれる水疱性の急性咽頭炎で、子どもがかかりやすいといわれています。
夏に流行し、主な病原体がコクサッキーウイルスです。
感染者の咳やくしゃみ、つばなどに含まれるウイルスによって感染(飛沫感染)し、また、水疱の内容物や便に排出されたウイルスが手などを介して、口や眼などの粘膜に侵入すると感染を起こします(経口・接触感染)。
高熱による倦怠感や、食べ物や飲み物を摂取するときに、のどに強い痛みを感じます。
[治療]
熱や痛みに対する治療が基本となりますが、とくに、のどの痛みで飲み物を拒むことにより起こる脱水症状を防止するために、水分補給をしっかり行なうことが大切です。
*手足口病
口の中や手足などに水疱性の発疹が出るコクサッキーウイルスよって起こる感染症です。
子どもを中心に主に夏に流行します。
感染してから3~5日後に口の中や口の周り、手のひら、足底や足背などに2~3mmの水疱性発疹が現われます。
感染者の鼻や咽頭からの分泌物、便などによる接触感染が主ですが飛沫感染もあります。
ほとんどの発病者は数日間で治る病気ですが、伝染性が強いので注意が必要です。
[治療]
特効薬がないので発熱や痛みなどの症状に応じた治療が行なわれます。ただ、
口の中の痛みが強いと食欲不振になるので、脱水の危険があります。水分の補給に気をつけ自然に治癒するのを待ちます。
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