主な病原微生物
㉘エコーウイルス ㉙ライノウイルス ㉚デングウイルス
㉛ジカウイルス ㉜SARSコロナウイルス
㉜´MERSコロナウイルス ㉜´´新型コロナウイルス
㉝ヒトパピローマウイルス ㉝’エボラウイルス
主な病原微生物
ウイルス
㉘エコーウイルス(Echovirus)
㉙ライノウイルス(Rhinovirus)
㉚デングウイルス(Dengue virus)
㉛ジカウイルス(Zika vuirus)
㉜SARSコロナウイルス(SARS coronavirus)
㉜´MERSコロナウイルス(MERS coronavirus)
㉜´´新型コロナウイルス(SARS-CoV2)
㉝ヒトパピローマウイルス(Human papillomavirus)
㉝’エボラウイルス(Ebolavirus)
マイコプラズマ、リケッチア、クラミジアは細菌とウイルスの中間体ですが、
細胞をもち、DNAが遺伝情報の担体なので「細菌」に分類されています。
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㉘エコーウイルス(Echovirus)
[特徴]
1本鎖のRNAをもつウイルスで、直径24~30nm、エンベロープはありません。
エコーウイルスによる熱は、1~2日高熱が出たあと、一旦下がって、再び半日程度後に、熱が上がることが多く、咳や鼻水はほとんど出ません。
解熱後に頬(頬の発疹が一番の特徴)と手足に細かい発疹がでるのが特徴です。
エコーウイルスは無菌性髄膜炎や幼児下痢症、かぜ症候群などを引き起こすウイルスです。
[治療]
自然治癒するので、薬なしで経過をみます。
㉙ライノウイルス(Rhinovirus)
[特徴]
ライノウイルスには100種類以上の血清型が存在します。このため風邪ワクチンの開発も難しい、とされています。
ライノウイルス(一本鎖のRNAウイルス)はかぜ症候群の病原体です。
潜伏期間は2~4日で鼻かぜ(くしゃみ、鼻みず、鼻づまり)、頭痛、せき、悪寒などの症状を呈します。発熱はないか、あっても軽く、急性中耳炎や副鼻腔炎、気管支炎肺炎などを起こすこともあります。
[治療]
治療としては、症状を和らげる薬を症状に応じて使います。
㉚デングウイルス(Dengue virus)
[特徴]
デングウイルスは4 つの血清型(1 型、2 型、3 型、4 型)に分類され、たとえば1型にかかった場合、1 型に対しては終生免疫をもちますが、他の血清型に対する交叉防御免疫は数ヶ月で消失します。
ウイルスは脂質膜で包まれ、その外側にエンベロープタンパク質が短い膜貫通断片を介して付加されていいます。
エンベロープタンパク質の役割は標的細胞の表面にくっついて感染過程を開始することです。
デングウイルス(RNAウイルス)は蚊の吸血によってヒトに感染すると、単球(マクロファージ)内で増殖してウイルス血症を伴う熱性疾患(デング熱、デング出血熱)を起こします。
デングウイルスは都市部ではネッタイシマカ、森林部ではヒトスジシマカによって媒介されて感染します。
ヒトからヒトへの直接感染はありません。
デング熱「4類感染症」
4~7日の潜伏期間を経て、突然の発熱で発症し、頭痛、眼窩痛、関節痛などの症状を呈します。
食欲不振、腹痛、便秘などを伴うこともあります。発症3~4日後に胸部、体幹に発疹が現われ、顔面や四肢に広がることもありますが、ふつう、一週間程度で消失します。
デング出血熱
デング熱と同様に発症し、発症2~7日後に出血傾向を示します。
さらに、点状出血、粘膜・消化管からの出血、血便をきたし、血漿漏出による胸水、腹水が出現します。
血漿漏出がすすむと、ショックに陥ります。(デングショック症候群)
[治療]
デング熱の治療は症状に対する対症療法です。
高齢者や幼児は脱水症を起こしやすいので、適切な水分補給が必要です。
㉛ジカウイルス(Zika vuirus)
[特徴]
ジカウイルスは、1本鎖のRNAを有するウイルスで、ジカ熱は、ジカウイルスをもつ蚊(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ)に刺されて感染します。
ジカ熱「4類感染症」
ジカ熱の症状は発熱や眼窩痛、発疹、頭痛などです。ただし、
多くの人はジカウイルスに感染しても症状が現われません。(不顕性感染)デング熱と比べて軽症です。
[治療]
治療としては、対症療法が主体で、痛みや発熱には解熱鎮痛剤を投与する程度ですが、脱水症状に対しては輸液を実施します。
㉜SARSコロナウイルス(SARS coronavirus)
[特徴]
SARSコロナウイルスは、一本鎖のRNAをもち、それらを包むエンベロープ表面に存在する突起が、太陽のコロナのような外観をもつことからこの名が付いています。
SARSコロナウイルスは重症急性呼吸器症候群(SARS:sever acute respiratory syndrome「2類感染症」)の病原体です。
飛沫感染によって感染が拡がると考えられています。
2~3日の潜伏期間を経て、38℃以上の発熱を伴い発症します。
せき、全身倦怠感などのインフルエンザ様症状を呈し、呼吸困難や肺炎を起こします。
キクガシラコウモリが自然宿主で、そのコロナウイルスがヒトに感染拡大し、SARSを引き起こすようになったと考えられています。
人獣共通感染症のひとつです。
㉜´MERSコロナウイルス(MERS coronavirus)
[特徴]
MERSコロナウイルスも一本鎖のRNAをもち、それらを包むエンベロープ表面に存在する突起が、太陽のコロナのような外観をしています。
MERSコロナウイルスは中東呼吸器症候群(MERS:middle east respiratory syndrome「2類感染症」)の病原体で、感染すると高齢者や基礎疾患をもつヒトには重症肺炎を引き起こします。
ヒトコブラクダが自然宿主の動物で、MERSはその感染源のコロナウイルスがヒトにせきや接触によって感染する人獣共通感染症です。
感染重症者の症状は高熱や肺炎、腎炎などです。
㉜´´新型コロナウイルス(SARS-CoV2)
[特徴]
新型コロナウイルスはCOVID-19(新型コロナウイルス感染症「2類相当の指定感染症」?)を起こす病原体で、このウイルスも一本鎖RNAをもっています。
新型コロナウイルスもSARSウイルスやMERSウイルスと同様に太陽のコロナの外観をもつエンベロープウイルスです。
自然宿主としてコウモリやネズミ、キツネなどの野生動物があげられますが、まだ、特定はできていません。
新型コロナウイルスが起こす感染症
COVID-19の感染様式は飛沫感染や空気感染と接触感染が考えられています。
COVID-19の臨床的特徴はインフルエンザの症状に加えて致死性の間質性肺炎・肺障害を引き起こすことです。
感染初期には嗅覚と味覚に異常がみられるともいわれていますが、かぜやインフルエンザなどの感染症でも現れることもあるので、とくに、COVID-19の感染初期症状とはいいがたいとのことです。
ただ、鼻がつまっていないのに、突然、においが感じなくなるのは新型コロナウイルス感染の特徴で、これは、新型コロナウイルスが侵入すると嗅神経細胞や周辺の組織がダメージを受け、においの分子の情報を受け取れなくなっている可能性があるため、と説明しています。(朝日新聞 2020年11月8日)
加えて、最近の知見では肺だけではなく全身に症状がでることがわかってきました。この全身の臓器の炎症に関わっているのが”サイトカインストーム”と呼ばれる免疫の暴走です。
新型コロナウイルスの侵入により、分泌されたサイトカインが増えすぎて正常な細胞までも攻撃するため、とくに、血管が炎症を起こすなど傷ついて血栓ができやすくなり、血管がつまることにより容体が悪化するリスクを生じます。
それが脳梗塞や心筋梗塞などの原因につながるという報告があります。
治療薬やワクチンの研究開発・臨床試験も急ピッチの現在進行形なるも、潜伏期間や感染経路、ウイルスの変異などにも、なお、不明な点が多く、厄介な感染症には違いありません。
また、新型コロナウイルスに対する鼻腔ポビドンヨード抗菌薬の有効性をin vitro(試験管内)で検討した結果、
ポビドンヨード鼻腔抗菌薬(希釈濃度0.5%、1.25%、2.5%)は、いずれの濃度も接触後15秒以内に新型コロナウイルスを完全に不活化することができたが、70%エタノールは、接触後15秒以内では新型コロナウイルスを完全には不活化することができなかった。
いずれの溶液でも、曝露後に細胞に対する細胞毒性作用は認められなかった、という。
(JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. 2020 Sep 17;e203053. doi: 10.1001/jamaoto.2020.3053. Online ahead of print)
さらに、新型コロナウイルスによる感染症になった後、約2割の人に髪の毛が抜けるなど脱毛の症状が確認され、
4か月たっても約1割の人に息苦しさや嗅覚障害が残ったという研究結果がまとめられています。
(国立国際医療研究センター 2020年10月27日、朝日新聞)
直近でも、新型コロナウイルスは脳にも感染し、髄膜炎や脳炎、意識障害のほか記憶障害が出る深刻な脳障害を起こす恐れがある、という報告が相次いでいます。専門家によるとそのメカニズムは、
①ウイルスが嗅神経や血管を通って脳の細胞に直接感染する場合、と
②脳以外の臓器(とくに肺)への感染に続く、免疫の暴走(サイトカインストーム)により全身に炎症が起き、脳の中枢神経にも影響を与える場合、との2パターンが考えられています。(2020年11月15日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)がCOVID-19のパンデミック(世界的大流行)を宣言し、いまも世界中で感染が拡大している新型コロナウイルス。
その収束は、いまのところ、見通しが立っていない状況のようです。
㉝ヒトパピローマウイルス(Human papillomavirus)
[特徴]
ヒトパピローマウイルスは2 本鎖DNA をゲノムとする小型のウイルスで,カプシドはもっているがエンべロープはありません。
ヒトパピローマウイルスはヒトの皮膚や粘膜に感染して種々のタイプの疣(乳頭腫)をつくります。
手足などにできる尋常性疣贅、顔面などにできる扁平疣贅、性器粘膜にできる子宮頸がん(不活化ワクチン)や尖圭コンジロームなどがあります。
㉝’エボラウイルス(Ebolavirus)
[特徴]
エボラ出血熱の病原体で、形態は多くはひも状、長さは800~1000nm、ゲノムは一本鎖RNAです。最近、
エボラウイルスの宿主はオオコウモリであることが明らかにされています。
エボラ出血熱「1類感染症」
ヒトへの感染経路は感染動物、患者の血液、臓器などとの直接接触から。
感染後2~21日の潜伏期間を経て、発熱、全身倦怠感、筋肉痛、頭痛などで発症し、腹痛、下痢、嘔吐をきたします。やがて、
消化管、皮膚をはじめ種々の臓器内に出血を招き、肝障害、膵炎、腎不全などの多臓器不全を引き起こします。
致死率は50~80%ときわめて高い。
[治療]
エボラ出血熱に対する治療は対症療法が中心となります。
患者の血液、体液、分泌液が感染源となるので、隔離室で治療する必要があります。
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