主な病原微生物のチョコット知識
④トキソプラズマ
主な病原微生物
④トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)
[特徴]
トキソプラズマはネコの小腸粘膜上皮細胞に寄生する胞子虫ですが、その増殖型虫体は多くの哺乳類や鳥類に感染します。
トキソプラズマ症の病原体です。
(1)形態と発育
細胞内寄生をする原虫です。
ヒトの体内では、長径3~5μmの三日月形をした増殖型虫体(栄養型)と、この増殖型虫体が2,000~3,000個集まり、その周囲が薄い膜で囲まれた直径50~70μmの球状をしたシスト型虫体(嚢子)とが認められます。
このシスト型虫体は、主に中枢神経系臓器細胞の中に見出されます。
固有宿主のネコにおけるトキソプラズマの最終発育型は、オオシスト(卵嚢子)とよばれ、大きさは10~12μmです。
糞便中に排出されるオオシストはすべてのほかの動物へ感染します。
(2)感染
ヒトへのトキソプラズマ感染は、ネコから排出されたオオシストが知らないうちに口から入る場合と、不十分に加熱した食用動物肉を通じて感染する場合とがありますが、多くは不顕性感染に終わります。ただし、
免疫能が低下していると、顕性感染となり、急性期に発熱、発疹、リンパ節腫脹、肺炎、心筋炎などを呈し、慢性期に移行して網脈絡膜炎(脈絡網膜炎)などを起こすことがあります。
妊産婦が感染したときは早産や流産の原因になったり、さらに、胎盤を通して胎児に感染したときは奇形児が生まれる可能性があります。
妊娠の前半期に初めてトキソプラズマに感染した場合は、流産や早産、死産が起こりやすくなり、妊娠4ヶ月以降に初めて感染した場合は、先天性トキソプラズマ症(水頭症や脳への石灰沈着、網脈絡膜炎、精神神経障害、運動障害などを徴候とする重篤な症状)を持つ子供が生まれる確率が高い、といわれています。
先天性トキソプラズマ症を除きヒトからヒトへの感染は起こりません。
(3)予防
生肉とくに豚肉を食べるときは、十分に加熱調理することでトキソプラズマ感染から予防できます。
なお、トキソプラズマは低温に対する抵抗力が弱いので、凍結肉中からは検出されません。また、
ネコとの過度な接触(糞便に触れるなど)、とくに、妊婦は注意する必要があります。
[治療]
先天性トキソプラズマ症と後天性トキソプラズマ症により治療方針が異なります。
SP合剤(スルファドキシン、ピリメタミン)、ST合剤(スルファメトキサゾール、トリメトプリム)あるいはスルファモノメトキシンとアセチルスピラマイシンの併用療法が行なわれます。
-6-