”免疫”のチョコット知識③
アレルギ-発症メカニズム
アレルギー
免疫は外部から侵入してくる異物への生体防御機能が生体にとって有利に働く反応でした。
これに対して、
異物に、病的な過剰反応経過を示すものは”アレルギー(Allergy)”、さらにショック症状などの、より過敏な反応が起こった状態は“アナフィラキシー(Anaphylaxis)”といわれます。
マスト細胞…アレルギー反応発現に関与する物質
▬…IgE受容体
ヒスタミン、セロトニン、ブラジキニン、SRS(低速反応物質)、ロイコトリエンなど
…アレルギー症状の発現に関与する物質
[ アレルギー発症メカニズム].
① | 体の中にアレルギーの原因となる特定の物質(抗原)が侵入してくると体質などによってIgE(抗体)をつくりやすい人がいます。(アレルギー体質) |
② | つくられたIgEはマスト細胞(肥満細胞)上のIgE受容体と結合して体の中に残ります。(感作状態) |
③ | 再び同じ抗原が入ってくると、IgE-マスト細胞結合体はさらにこの抗原とも結合し、 その結果抗原抗体反応が起こります。 |
④ | これがシグナルとなってマスト細胞から大型顆粒が放出され、その中に含まれるヒスタミンなどの起炎物質がまわりの神経や血管、筋肉などに刺激・損傷を与えると、数分から数十分後にはさまざまな症状が出現します。. |
⑤ | そこが鼻の中ならクシャミや鼻水(アレルギー性鼻炎)、気管支ならせき(気管支喘息)、腸の中なら下痢(食事性アレルギー性胃腸炎)、頭の中の血管が広がれば頭痛(片頭痛)、皮膚ならばじん麻疹(急性じん麻疹)や湿疹(アトピー性皮膚炎)などの症状が現われます。 |
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これが
Ⅰ型アレルギーといわれるもので、IgEとマスト細胞が関与する即時型(アレルギー反応出現20分くらい)アレルギーです。
代表的疾患
a)気管支喘息 b)アレルギー性鼻炎 c)じん麻疹
d)アトピ-性皮膚炎 e)偏頭痛 f)アレルギー性結膜炎
g)食物アレルギー など。
また、
Ⅱ型アレルギーは、何らかの原因で自分の組織や細胞表面が抗原として認識されてしまい、自分の組織や細胞表面に対する抗体(IgM,IgG)が産生され、それによって自分の組織や細胞表面が攻撃される即時型の補体介在性過敏症です。
代表的疾患
a)自己免疫性溶血性貧血 b)グッドパスチャー症候群
c)重症筋無力症 d)橋本病 など。
Ⅲ型アレルギーは、血中に溶けている抗原、抗体(IgGまたはIgM)、補体などが互いに結合して形成する免疫複合体(抗原抗体複合体)が血管や近傍の組織細胞を傷害する即時型の免疫複合体介在性過敏症です。
代表的疾患
a)関節リウマチ b)SLE(全身性エリテマトーデス)
c)糸球体腎炎 d)過敏性肺炎 e)血清病
f)シェーグレン症候群 など。
Ⅳ型アレルギーは抗体が関与する体液性免疫ではなく、ヘルパーT細胞(Th1)に活性化されたキラーT細胞やマクロファージなどが周囲の自己組織を傷害してしまう細胞性免疫による遅延型(アレルギー反応出現1~2日)アレルギーです。
代表疾患
a)接触性皮膚炎 b)Ⅰ型糖尿病 c)多発性硬化症
d)(ツベルクリン反応) e)移植片拒絶反応
f)薬剤性肺炎 g)ギラン・バレー症候群 など。
多発性硬化症(Multiple Sclerosis; MS)は、視力障害、感覚障害、運動麻痺などさまざまな神経症状の再発と寛解を繰り返す、厚生労働省が指定する難病のひとつです。
Ⅴ型アレルギーは、自己細胞表面レセプターに対する抗体が産生され、そのレセプターと抗体が結合して自己細胞に異常な反応を起こさせてしまう即時型の補体介在性過敏症です。
代表疾患
a)バセドウ病(グレーブス病) など。
アレルギー性鼻炎、気管支喘息、食事性アレルギー性胃腸炎などでは、IgE-肥満細胞結合体に再度同一抗原の侵入があると抗原抗体反応により肥満細胞に含まれる起炎物質(ヒスタミンやセロトニンなど)が放出されます。
その起炎物質が放出組織に刺激損傷を与えると、いろいろな症状が現われます。(体液性免疫型アレルギー)
接触性皮膚炎の場合は、感作Tリンパ球が炎症性リンフォカインを放出することで皮膚組織の炎症を起こします。(細胞性免疫型アレルギー)
ここで、アレルギーの発症には遺伝的素因(体質=IgEのつくりやすい人=アレルギー素因)に加えて、環境の変化による抗原の種類と抗原量の増加が考えられます。
アレルギー素因が生後の早い時期にゆさぶられると、出る場所や症状を変えてアレルギー疾患が現われます。
アレルギー疾患が小さい頃から始まり、年齢とともに姿を変えて連続的に発症、移行、併発する現象は[アレルギーマーチ]と呼ばれています。
アレルギー疾患の発症の予防やアレルギーマーチの進行を抑えるには、アレルギー素因のある人とくに妊婦さんは、卵料理の食事(卵は抗原性強く、他の抗原に対する抗体をも刺激増加させることが知られています。)には十分注意を払う必要があります。
そして、アレルギー体質は遺伝します。
ご両親がお二人ともアレルギー体質の場合、生まれるお子様3人のうち2人以上に、いずれか一方の親御様がアレルギー体質であれば、生まれるお子様3人のうち1人以下にアレルギー体質を受け継ぐといわれています。
アレルギー体質の人が発症するアレルギー性鼻炎や気管支喘息、アトピ-性皮膚炎、片頭痛などの形質と呼ばれるものは、いつ再発するかはわかりませんが治癒する望みはあります。 対症療法で根気よく治療することをおすすめします。
ところで、マスト細胞の表面にあって、さまざまなアレルギー反応を抑え込む
たんぱく質(アラジン-1:Allergin-1)が発見された、と聞いております。
(筑波大学研究グループ)
「nature immunology 2010.06.06 オンライン版から引用」
アラジン-1(アレルギー発症抑制分子)
※筑波大学 広報・公開 記者会見2010年6月3日記者説明会PDFファイル
現在、アレルギー疾患の治療には放出されたヒスタミンなどの働きを抑える抗アレルギー剤(抗ヒスタミン剤、マスト細胞安定剤など)や抗炎症剤などが使われていますが、アラジン-1の働きを高める薬剤が開発されればアレルギー反応を元から断つことができます。
これは、さまざまなアレルギー疾患に対して効果のある画期的なアレルギー治療薬にもつながる可能性があります。
アラジン-1は肥満(マスト)細胞からの顆粒の放出を強力に抑制し、
アレルギー反応を抑える働きのある分子であることが
明らかになっています。
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この度!地下足袋!リンクの旅へどうぞ~
詳しくは花野井薬局健康コラム“なにをいまさら、されど「アレルギー」”を
ご覧ください。
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