“免疫”のチョコット知識⑤ 悪玉免疫細胞、
膠原病、糖尿病、バセドウ病、橋本病
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自己免疫疾患ー2
ところが 、この免疫は自己抗原(自分の体細胞や組織)に対しては抗体やNK細胞、キラーT細胞などを産出しないのが原則です。
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しかし、この原則が時として破られ、 自分の身体の成分を攻撃排除する悪玉免疫細胞(自己免疫型T細胞「Th17細胞」)がつくられることがあります。
悪玉免疫細胞は自己免疫疾患で組織障害を起こす主役と考えられています。
この悪玉免疫細胞が機能活動すると、さまざまな自己免疫にかかわる病気が発症します。 これが自己免疫疾患(Autoimmune disease)といわれるものです。
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自己免疫疾患には
a.全身性自己免疫疾患と
b.臓器特異的自己免疫疾患とがあります。
a.全身性自己免疫疾患
すべての細胞内に存在する核や細胞質たんぱく質を標的とした免疫応答により、全身性の炎症や臓器障害が生じます。
a-1.全身性エリテマトーデス(SLE)
顔面蝶形紅斑、骨破壊を伴わない左右対称性の関節炎、腎障害など、多彩な全身症状が現われます。.
a-2.関節リウマチ(RA)
外敵に立ち向かうはずの免疫が内乱を起こして関節を保護する滑膜を攻撃するため、滑膜の炎症により、左右対称に関節変形と骨の破壊を引き起こす病気です。
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そして、関節リウマチの原因として、TNF-α(腫瘍壊死因子 Tumor necrosis factor-α)という物質がかかわっていることが同定されています。
① |
免疫担当細胞(T細胞やB細胞、マクロファージなど)間の情報伝達を担う物質サイトカインのTNF-αやIL-6、Th-17が関節の軟骨の表面にある滑膜を攻撃する。 |
② |
滑膜の異常増殖を引き起こす。 |
③ |
滑膜が作る破骨細胞が関節の骨や軟骨を破壊する。やがて関節は変形する。 |
TNF-α:サイトカインの一つで腫瘍壊死因子と呼ばれ、腫瘍を攻撃する物質。この物質が関節リウマチの関節では大量に産生され、腫れや痛みなどの炎症と関節の破壊に大きくかかわっています。 IL-6(Interleukin):T細胞やマクロファージなどの細胞により産生される体液性免疫をを制御するサイトカインの一つ。炎症・免疫疾患の発症メカニズムに関与。 Th-17:Th-17細胞の産生する炎症性サイトカインの一つ。関節リウマチにおける破骨細胞活性の亢進。 |
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また、関節リウマチの腫れや痛みは「気圧」と統計学的に負に相関(気圧が低いほど関節リウマチの腫れや痛みの指標が悪化する)し、なかでも、3日前の「気圧」と最もよく相関する、ことがわかりました。
このことから、関節リウマチの患者さんが実感している「天気が悪くなるとリウマチが悪化する」という自覚症状が、統計学的にも事実であることが明らかになりました。
ー 京都大学
英文誌「PLOS ONE」の電子版に2014年 1月15日 発表
関節リウマチの症状は、はじめは倦怠感や食欲不振、微熱が続き、身体のあちこちに痛みを感じます。 やがて関節に左右対称に関節痛が顕著に現われ、関節が腫れて変形するようになります。 胸膜炎や心筋炎、胃腸の潰瘍、角結膜炎などを併発することもあります。
中年女性に多く発症します。.
a-3.シェ-グレン症候群(SjS)
主に涙腺や唾液腺などに炎症が起こり、独特の乾燥症状のでる病気です。目や膣や口の中が乾き、涙や唾液などが出にくくなり、耳下腺が腫れることもあります。 .
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b.臓器特異的自己免疫疾患
特定臓器にのみ存在する特異的な抗原に対する免疫応答により、その臓器に病変が生じます。
b-1.Ⅰ型糖尿病(DM)
キラーT細胞が膵臓のランゲルハンス島β細胞を破壊することにより、インスリン産生低下と絶対的不足により起こる病気です。
b-2.重症筋無力症(MG)
神経筋接合部のニコチン性アセチルコリン受容体を自己抗体が攻撃することによって、神経筋接合部の伝達障害が起こり、筋肉の易疲労感や筋脱力を生じる病気です。
b-3.バセドウ病(BD)またはグレーブス病(GD)
甲状腺刺激ホルモンレセプターに対する自己抗体が甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンが過剰に産生される病気です。
バセドウ病の3大症状は甲状腺腫、眼球突出、頻脈です。
b-4.橋本病(HD)
甲状腺ペルオキシダーゼに対する自己抗体が甲状腺組織を破壊することによって甲状腺機能が低下する病気です。
疲れやすい、物忘れ、むくみ、息切れ、脱力感などの症状が現われます。
b-5.特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
血小板に対する自己抗体が血小板を破壊する結果、抗血小板自己抗体の産生が起こります。紫斑、鼻出血、粘膜出血などを生じ、生命を脅かす頭蓋内出血に代表される重大出血が起こることもあります。
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そして、
悪玉免疫細胞をつくる
遺伝子( IカッパーBゼータ : Iκ Bζ )
も発見されています。
(東京医科歯科大学などの研究グループ)
「Nature 2010.04.11 オンライン版から引用」
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[イメージ図]
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もし、この IカッパーBゼータ遺伝子の働きを抑えることができれば、悪玉免疫細胞の産出は少なくなります。そうなれば、自分が自分の身体の成分に対して攻撃排除する抗原抗体反応は激減します。これらのことから自己免疫疾患を治療する新規の方法として期待できるのでは…。
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この度!地下足袋!リンクの旅へどうぞ~
詳しくは花野井薬局プライベートノート“「膠原病」のチョコット知識”を
ご覧ください。
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