“免疫”のチョコット知識⑥
膠原病とその治療薬
自己免疫疾患ー3
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膠原病は
.細胞の結合組織(細胞と細胞をくっつけている膠でできたのりのようなもの)に“病変”が起こる
①「結合組織疾患(Connective tissue disease)」 と
身体を動かすための運動器(関節、筋肉、骨、じん帯、腱など)に“痛み”の症状がでる
②「リウマチ性疾患(Rheumatoid disease)」と
自分の身体をつくっている細胞や組織を敵(抗原)と勘違いして兵隊(抗体)を大勢集め、内乱を起こして自分で自分の身体を攻撃したり排除したりする結果、さまざまな“病気”が起こる
③「自己免疫疾患(Autoimmune disease)」とを
合わせもつ疾病グループです。
ここで、
ヒトの身体は常に病原体などの外敵の危険にさらされています。
外部から細菌やウイルスなどの外敵が入ると体内の免疫システムにより、その外敵が自分(自己)か、自分でない(非自己)か、を見きわめます。自分でない(非自己)と認識すると、
ヘルパーT細胞(Th2)はB細胞に抗体産出の指令を出し、抗原抗体反応により外敵を攻撃排除します。ー 体液性免疫
同時に、ヘルパーT細胞(Th1)がキラーT細胞を刺激すると、キラーT細胞も外敵を破壊排除します。ー 細胞性免疫
このように、体液性免疫と細胞性免疫が協力連携して侵入してきた外敵を攻撃破壊するのが免疫でした。
そして 、この免疫は自己抗原(自分の体細胞や組織)に対しては抗体やNK細胞、キラーT細胞を産出しないのが原則です。(免疫寛容)
しかし、この原則が時として破られ、 自分の身体の成分を攻撃排除する悪玉免疫細胞(自己免疫型T細胞「Th17細胞」)がつくられることがあります。
この悪玉免疫細胞が機能活動すると、さまざまな自己免疫にかかわる病気が発症します。 これが自己免疫疾患です。
悪玉免疫細胞は自己免疫疾患で組織障害を起こす主役と考えられています。
また、悪玉免疫細胞をつくる遺伝子( IカッパーBゼータ: Iκ Bζ)も発見されています。(東京医科歯科大学などの研究グループ)
「Nature 2010.04.11 オンライン版から引用」
もし、この IカッパーBゼータ遺伝子の働きを抑えることができれば、悪玉免疫細胞の産出は少なくなります。そうなれば、自分が自分の身体の成分に対して攻撃排除する抗原抗体反応は激減します。このことは自己免疫疾患(関節リウマチなど)を治療する新規の方法として期待できます。
<治療>
基本的には対症療法として薬剤の投与を行ないます。
使用される薬剤の代表的なものに、
痛みをやわらげる
鎮痛剤、
炎症を鎮めたり、免疫反応を抑制する
ステロイド剤、
免疫にかかわる細胞の分裂や増殖を邪魔することにより免疫反応を抑える
免疫抑制剤があります。
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鎮痛剤
非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs:nonsteroidal antiinflammatory drugs)が使われます。
*軽症には、緩和で副作用も少ない半減期の短いプロピオン酸系が使用されます。
(商品名:ロキソニン、ブルフェン、二フランなど)
*重症には半減期の長いフェニ-ル酢酸系などが用いられます。
(商品名:ボルタレン、インテバンなど)
*消化器への副作用の少ないコキシブ系もよく使われています。
(商品名:セレコックスなど)
非ステロイド性消炎鎮痛剤の特徴(とくに関節リウマチに対して)
(1) 鎮痛効果が速くあらわれる。
(2) 抗炎症効果は1~2週間かかる。
(3) 病状進行阻止や関節破壊防止はない。
(4) 非酸性消炎鎮痛剤より酸性消炎鎮痛剤が作用は強い。
ステロイド剤
☆代表的なステロイド剤
※プレドニゾロン(商品名:プレドニン)
※メチルプレドニゾロン(商品名:メドロール)
※デキサメサゾン(商品名:デカドロン)
※ベタメサゾン(商品名:リンデロン)
などがあります。
膠原病にはステロイド剤を長期間連続して使用します。
しかし効果があるということは副作用もそれなりにあるということになります。
大量投与で出現する主な副作用
※免疫抑制作用のため細菌などに感染しやすい。
※糖尿病
※胃潰瘍
※精神症状を来たす
※ムーンフェイス
※中心性肥満
など
長期間投与で出現するとおもわれる副作用
※副腎機能低下
※骨粗しょう症
※脂質異常症
※高血圧症
※筋力低下・筋肉痛
※白内障・緑内障
などがあります。
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結局! 薬局! 花野井薬局!
ステロイド剤は骨をつくる基本となる骨芽細胞の機能やコラーゲンの合成を直接抑制すると同時に骨吸収(骨破壊)を促進するので副作用として骨粗しょう症を招きます。
骨粗しょう症の予防には運動療法や食事慮法があります。また、 骨粗しょう症の治療には、活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤、ビスフォスフォネート製剤、女性ホルモン製剤、SERMやカルシウムなどを服用しますが、骨粗しょう症の治療と予防には、なによりも直射日光(紫外線)が必要なことはいうまでもありません。(光線過敏症の方は注意してください。)
骨粗しょう症の治療薬
● 腸管からのカルシウムの吸収を促進して体内のカルシウム量を増やす薬剤
活性型ビタミンD3製剤(ワンアルファ、アルファロールなど)
● 骨の形成を促進する薬剤
ビタミンK2製剤(グラケー、ケイツーほか)
● 骨吸収を抑制する薬剤
女性ホルモン製剤(エストロゲン)(エストリール、プレマリンほか)
ビスフォスフォネート製剤(ボナロン、フォサマック、ベネット、アクトネルほか)
SERM(塩酸ラロキシフェン)(エビスタ)
SERM(Selective Estrogen Receptor Modulator:選択的エストロゲン受容体調整薬 )
カルシトニン製剤(エルシトニンほか)
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免疫抑制剤
免疫抑制剤はステロイド剤の効果が十分でないときなどに代わりになったり、ステロイド剤と併用されたりします。
☆代表的な免疫抑制剤として
※アルキル化剤(商品名:エンドキサンP)
※代謝拮抗剤(商品名:アザニン、イムラン、リウマトレックス、ブレディニン)
. ※T細胞活性阻害剤(商品名:ネオーラル、プログラフ)
などがあります。
免疫抑制剤の全般に共通する副作用として
※ウイルスに感染しやすくなる。
※骨髄の働きを抑えるので造血障害がある。
※胎児に形態異常を招く可能性がある。
※肝障害、脱毛、胃腸障害
などがあります。
免疫抑制剤は通常内服で使用されていますが、関節リウマチ治療薬には注射剤が用いられるようになってきました。
その代表的なものが
生物学的製剤(商品名)
TNF-α阻害剤…エンブレル、レミケード、ヒュミラ、シンポニーなど
T細胞選択的共刺激調節薬…オレンシアなど
IL-6受容体モノクローナル抗体…アクテムラ など
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TNF–α:Tumor necrosis factor(腫瘍壊死因子)
T:Thymus (胸腺)
IL:Interleukin.
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この度!地下足袋!リンクの旅へどうぞ~
詳しくは花野井薬局プライベートノート“「膠原病」のチョコット知識”を
ご覧ください。
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