寄生虫のチョコット知識①
ヒト回虫
一時的あるいは持続的に生体宿主(host)に住みついて、その宿主から栄養を摂取して生活している動物を寄生虫(parasite)とよんでいます。
そして、寄生の場所によって、ノミやシラミ、ダニなどのように体表面に寄生するものを外部寄生虫、体内に寄生するものを内部寄生虫といわれています。
内部寄生虫には、ヒト回虫や条虫のように肉眼で観察できるものと、赤痢アメーバやマラリア病原虫のように顕微鏡を用いなければ見えないものとがあります。
また、内部寄生虫は感染経路により、
に分けられます。
Ⅰ.野菜類を感染源とする寄生虫
野菜類を感染源とする寄生虫の特徴は、野菜類のみならず、そのほかの食物あるいは食器や手指などを通じても感染する場合があることです。
また、取り立ての野菜や生野菜、新鮮野菜、無農薬野菜などがもてはやされる今日、野菜類に付着している寄生虫による感染にも注意を払う必要があります。
1.ヒト回虫
(1)形態と発育
ヒト回虫(Ascaris lumbricoides)は長さ20~30cmの淡い桃色のミミズを大きくしたような形の線虫で、小腸上部に寄生する場合が多く、ヒトの寄生線虫類としてはもっとも一般的な種類です。
発育条件が整った受精卵は十数日で卵内部に幼虫ができ(幼虫期)、消化器上部でふ化してから、腸管壁を通過し、肺を通り、気管、食道、胃、十二指腸を経て、再び小腸にもどり、約2ヵ月半で成虫になります。
一般に、ヒト回虫は肛門を経て外界に出るが、なかには胃、食道、口へと逆行して外界に出るものもあります。
(2)感染
虫卵のついた生野菜や漬物を食べて感染します。土壌、とくに畑土壌の受精卵は、適当な温度や湿度などの条件が整うと発育し幼虫期卵となります。 3~6月また9~11月が回虫卵が外界に多い時期です。
人糞肥料にかわる化学肥料の散布、学校などにおける集団駆虫の徹底により、ヒト回虫の感染は激減しています。
(3)症状
胃ケイレンや胆のう炎とまちがえられるような激しい腹痛を起こすことがあります。また、
まれに失神、幻覚などの神経症状も報告されています。
(4)予防
生野菜は十分に水で流し洗いをします。回虫の卵は熱に弱く、70℃以上では直ちに死んでしまうので、熱湯にくぐらせればなお安全です。
食事の前の手洗い、常につめを短く切るなど清潔を心がけることも大切です。
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