寄生虫のチョコット知識⑥
ウエステルマン肺吸虫(肺ジストマ)
Ⅲ.魚介類を感染源とする寄生虫
食生活で、魚介類を生で食べる機会が多い場合、これらの魚介類が寄生虫に汚染されていると感染する危険率は高くなります。 しかし、
寄生虫汚染の危険率の高い魚介類といえども、これらの魚介類の調理に十分な注意を払えば、魚介類を感染源とする寄生虫病をかなり予防することができます。
1.ウエステルマン肺吸虫(肺ジストマ)
ウエステルマン肺吸虫(Paragonimus westermanii)の成虫は、直径約0.3mmの球状で肉眼でも見ることができます。
肺に嚢虫をつくって寄生すると、肺結核に似た症状(せきや痰、ときに喀血など)を起こしたり、頭蓋腔内に寄生した場合には、脳腫瘍のような重い症状を呈することがあります。
(1)形態と発育
痰に混じって外界に出た虫卵がふ化し、水中で発育して幼虫になります。
幼虫は第1中間宿主カワニナ、ついで第2中間宿主の淡水産カニ類(サワガニやモクズガニなど)に入り込みます。
その体内で最終的に被嚢幼虫(メタセルカニア)の形で寄生します。
人体に経口的に侵入したメタセルカニアは、小腸で脱嚢して幼虫となり、幼虫は腹腔、横隔膜を通過して胸腔に入り、肺の表面から肺実質細胞にまで侵入し、感染症状は数年間も続きます。
(2)感染経路
淡水産のカニを生で食べないのに感染が絶えないのは、生のサワガニやモクズガニをまな板の上で調理するとき、メタセルカニアがまな板の上と、その周囲に飛び散ってほかの食品、食器、手指を汚染して、経口的に感染するためです。
したがって、淡水産のカニを調理する場合には十分に加熱処理をすることです。
(3)予防
とにかく、淡水産のカニを生で食べないことです。また、
甲羅に酒をついで飲む風習や、淡水産のカニをつぶした汁を生で飲んだり、カニの肉を傷口に当てたりするのは危険です。また、
淡水産のカニを調理するときに、手や食器に幼虫が付いていると、たとえ加熱した料理であっても感染することがあるので注意を要します。
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