寄生虫のチョコット知識⑧
アニサキスの幼虫、有棘顎口虫
4.アニサキスの幼虫
もともと海産ほ乳類(クジラ、イルカ、アザラシ、オットセイなど)を最終宿主として寄生する一種の回虫であるアニサキス(Anisakis simplex)の幼虫は、ヒトの消化管に寄生すると腹痛など、かなり激しい感染症状を起こします。
(1)形態と発育
ヒトから発見されるアニサキスの幼虫は体長2~3cmの糸くずのような線虫です。
ヒトはアニサキスにとってぴったりの宿主ではないので、ヒトの体の中で死滅し、成虫にまで発育することはありません。
(2)感染
幼虫に汚染されたイワシ、タラ、サバ、アジ、イカなどの第2中間宿主である魚類の生食によってヒトは感染します。
(3)症状
胃あるいは回腸の粘膜下組織に寄生して膿瘍あるいは好酸球性肉芽腫を形成する過程で激しい腹痛を起こします。
(4)予防
刺身やすしなど魚の生食が原因となるので、アニサキス幼虫汚染率の高い魚の調理には十分注意を払うことが必要です。
アニサキス幼虫は、低温に弱いので、冷凍処理によってもその感染能力を完全に失わせることができます。
アニサキス幼虫はー20℃では数分間で死滅します。
熱に対しても弱く、70℃以上の温湯中では瞬時に死滅します。
5.有棘顎口虫
多くの顎口虫類の中で、人体感染例のあるのは有棘顎口虫(Ganatostoma spinigerum)のみです。
有棘顎口虫の成虫はネコ科動物の胃壁に袋をつくって寄生します。
動物から産み出された虫卵は水中で幼虫になって第1中間宿主(ケンミジンコ類)、ついで第2中間宿主(淡水魚・両棲類・爬虫類・鳥類など)を経てヒトに感染します。
幼虫の体長は約0.5mmで、ヒトの体内ではこれ以上成長しません。
頭部は冠のような形をしていて、こまかい鉤が並んでいます。体はやや太い円筒形をしています。
ヒトの体内では幼虫が皮下をはい回るため、皮膚に激しい痛みやかゆみの症状が現われます(皮膚爬行症)。
ときに幼虫は目や脳、肺に入り、思わぬ障害を起こします。
幼虫の付いた雷魚やドジョウ、ナマズ、カエルなどを生のままで食べることが感染の最大の原因です。
予防は淡水魚、とくに雷魚やドジョウ、ナマズなどの生食をしないことと、十分な熱を加えて調理すること、などです。
[有棘顎口虫]
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