Ⅳ.飲料水を感染源とする寄生虫⑨
赤痢アメーバ、ランブル鞭毛虫、蟯虫
Ⅳ.飲料水を感染源とする寄生虫
アメーバ赤痢の病原体赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)と、ランブリアン性下痢の原因となるランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)は、ともに栄養型虫体とシスト型虫体を持っています。
そのうち感染に関係のあるのはシスト型虫体です。
保虫者の手指を介して原虫が直接口から侵入する感染と、原虫によって汚染された飲食物といっしょに原虫が口から入る感染とがあります。
保虫者がまったく無自覚症状の場合もあるので注意を要します。
1.赤痢アメーバ
赤痢アメーバの栄養型虫体は0.03mmくらいの原虫です。
シスト型虫体は0.01~0.02mmの球形で、周りは膜で包まれていて運動はしません。
シスト型虫体が含まれているヒトの便に汚染された生水、生野菜を口にすることで感染したり、シスト型虫体で汚染されている手指でつくった料理を食べることによっても感染します。
急性症状は、粘液や血液の混じった下痢便を一日に何回もすることや、激しい腹痛を訴えることです。
慢性化すると、長年にわたって粘血便と便秘を交互に繰り返すようになります
予防はトイレの後の手洗いの励行、生野菜はよく水で流し洗いをする。食べ物はできるだけ熱を通すことなどです。
[赤痢アメーバ]
2.ランブル鞭毛虫
ランブル鞭毛虫(Giardia lammblia)はジアルジア症(giardiasis)の病原体です。
ランブル鞭毛虫の栄養型虫体の大きさは約0.02mm。シスト型虫体の大きさは約0.007mmです。
シスト型虫体に汚染された飲食物を摂取して感染したり、手指についたシスト型虫体を直接口に入れることで感染します。
顕著に現われる症状は、腹痛や下痢、食欲不振などです。
予防としては、食器類や調理器具は水洗いだけではなく、熱湯を通すことです。
[ランブル鞭毛虫]
Ⅴ.その他
蟯虫
蟯虫(Enterobius vermicularis)の卵が手から口に入って感染します。
卵が産みつけられた肛門部がかゆくなり、そこをかいた手に卵がついて、それが直接口に入り感染が成立するといわれています。
お尻がかゆくなったり、お尻に湿疹ができたり、などの症状があり、さらには、ときどき便中に長さ1cmぐらいの白い蟯虫が見つかることもあります。
蟯虫 のオスは体長2~5mm、メスは8~13mmの糸くずのような白くて小さい線虫です。
予防としては、蟯虫の卵は紫外線に弱いので布団やシーツなどの寝具類はよく日光消毒をすることです。また、
食事前には必ず手を洗い、つめは短く、きれいにしておくこと。お風呂に入ったら、肛門のまわりを清潔にして、下着をまめに取り替えること、などが大切です。
[蟯虫]
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