性感染症のチョコット知識④
そ径リンパ肉芽腫、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、
B型肝炎、C型肝炎
(5)そ径リンパ肉芽腫
病原体はクラミジア( Chlamydia trachomatis )。
クラミジアは主に眼と泌尿生殖器の粘膜に感染し、それぞれトラコーマ、性器クラミジア感染症の原因となります。
.
性器クラミジアは性行為を通じて直接伝染します
潜伏期は 2 ~ 3 日。 外陰部に小丘疹やびらんを生じ 2 週間ぐらいで症状は消えます。
その後、男性は排尿困難、排尿にしみたり、尿道からうすい分泌液を認めることもあります。
しかし、女性の場合は症状が現われにくく、おりものが増えたり、不正出血、軽い腹痛、性交痛があるくらいでほとんど自覚症状がなく、よく見過ごされます。
感染後2~3週ごろから徐々にそ径リンパ節が腫れて、鶏卵大の塊状腫瘍を形成します。
そ径リンパ肉芽腫は梅毒、淋病、軟性下疳に続く性病という意味で「第四性病」とも呼ばれます。
熱帯・亜熱帯地方ではありふれた性病で、全世界に広く分布しています。日本では近年10~20歳代に多く発症し、2015年だけでも24,000人の感染者が認められ社会問題となっています。
女性の感染者が多く、無症状あるいは軽微な症状の場合が多く、早期発見が難しい。性器ばかりでなく、咽頭や眼に感染することもあります。
女性が治療せず、放置すると「子宮外妊娠」や「不妊症」につながる危険があります。
抗生物質のなかでも特にテトラサイクリン系、マクロライド系、ニューキノロン系のものが奏効し、 first choice で使われます。
性器クラミジア保有の母体から新生児が産道通過時に感染を受けると封入体性結膜炎、新生児クラミジア肺炎を起こすことがあります。
この疾患の場合も本人ばかりでなく、パートナーも同じ薬剤の投与が必要です。
妊婦に対しては胎児への影響を考慮してマクロライド系が使用されます。
テトラサイクリン系抗生物質
経口 1 日 150~600㎎ 14 日間
注射 1 日 400㎎点滴静注 5日間 その後経口
マクロライド系抗生物質
経口 ジスロマック(250) 4錠 1日1回のみ
(6)性器ヘルペス
感染するとヘルペスウイルス(HSV: Herpes simplex virus Herpesviridae-DNAウイルス)特有の強い細胞破壊作用により、水疱と潰瘍を多発します。
.
性器や口腔内などに米粒大の複数の水ぶくれができてかゆみがあり、破れると激痛に変わります。さらに、排尿障害、ときには痛みによって歩行できない場合もあります。
治癒後、宿主の抵抗性が低下したとき、回帰発症することがあります。
.
外用 1 日 2~3回 ゾビラックス軟膏 塗布
(疼痛に対してはキシロカインゼリー塗布)
経口 1 日 5回 ゾビラックス錠( 200 ㎎) 5日間
.(7)尖圭コンジローマ
尖圭コンジローマは、ヒト・パピローマウイルス(Human papillomavirus:HPV-DNAウイルス)に感染し、発症すると性器や肛門の周りにイボ(疣贅)ができます。
感染してから症状が出るまで数か月~1年程度。自覚症状がない場合が多いのですが、性器の痛みやかゆみ、違和感を覚えることがあります。また、先がとがったカリフラワー状のイボが多発します。
電気メスなどによる焼却や、5FU軟膏(抗がん剤軟膏)、ブレオマイシン軟膏(抗がん剤軟膏)、イミダゾキノリン誘導体のベセルナクリーム(尖圭コンジローマ治療薬)などを塗布します。
(8)B型肝炎
. B型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus:HBV)の感染によって発症します。
B型肝炎は潜伏期が長く、輸血による感染や母児感染(垂直感染)のみならず、性行為による感染も多くみられます。
*原因療法(ウイルスを消失もしくは減少させる療法)
インターフェロン、ラミブジン(ゼフィックス)、
アデフォビル(ヘプセラ) エンテカビル(バラクルード)
*対症療法(炎症を抑える)
ウルソ、ネオミノファーゲン製剤、漢方など
*肝がんの発生抑制療法
インターフェロン、発がん抑制薬
(9)C型肝炎
.C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV)の感染によって発症します。
C型肝炎ウイルスの感染経路
体液や血液を介する感染経路として考えられるものに
1. 覚せい剤を打つなど注射器の使いまわし。
2. 入れ墨を彫る。
3. 十分に消毒されていない器具を使ってピアスの穴をあける。
4. 十分に消毒されていない鍼を使った民間療法。
5. 母児感染(感染率は低い)
6. 性行為(感染率は低い)
などがあります。
①C型肝炎ウイルスを排除する治療
☆ インターフェロン(Interferon)
☆ ペグインターフェロン(PEG Interferon)
☆ リバビリン(Ribavirin)
☆ ハーボニー配合錠(レジパスビル、ソホスブビル)
などの投与。
②C型肝炎の進行を遅らせる治療
☆ インターフェロン少量長期投与
ウイルスを完全に排除する場合にはインターフェロンを一定の量を期間を限って投与しますが、病気進行を遅くする治療の場合には少量を長期にわたって投与します。
☆ グリチルリチン、ウルソデオキシコール酸、 小柴胡湯、緑茶
これらは肝臓を保護する働きがあり、肝炎の炎症を抑えることによって病気の進行を遅らせる効果が期待できます。
☆瀉血
C型肝炎になると肝臓に鉄分がたまるようになります。この鉄が増えると炎症が強くなり悪化するため、血液を取って捨てることをくり返し、鉄を減らします(除鉄療法)。同時に鉄分の多い食事も控えます。(鉄制限食)
B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染すると治りにくく、慢性化しやすく、しかも慢性肝炎の約1割は肝硬変に進み、その半数は肝がんになるといわれています。また、急激に悪化していわゆる劇症肝炎を引き起こし、死に至ることもあります。
-4-