感染症のチョコット知識⑪ サルモネラ菌が起こす感染症
D.グラム陰性桿菌感染症
b.サルモネラ菌が起こす感染症
サルモネラ属(Salmonella)にはヒトに
①感染型食中毒を起こす
菌種(エンテリティディス菌:Salmonella Enteritidis、ネズミチフス菌:Salmonella Typhimuriumなど)と
②三類感染症に指定されている
腸チフスを起こす腸チフス菌(Salmonella Typhi)、パラチフスを起こすパラチフス菌A(Salmonella Paratyphi A)があります。
①感染型食中毒といわれるものは原因菌の濃厚感染を受けた飲食物(生菌数1万個以上)を摂食し、さらに腸管内でその細菌がおびただしく増殖(生菌数10万個以上)することによって発症する食中毒です。
サルモネラ菌による食中毒は最近、感染力の強いエンテリティディス菌に汚染された鶏肉や鶏卵を介した食中毒が増加して問題を起こしています。
鶏の腸管にはサルモネラ菌がいることが多いため、鶏卵の生食をしない国も多いようです。
日本における食中毒発生件数の10~30%がサルモネラ菌が原因とされ、とくに鶏卵に由来する菓子などによる大規模食中毒が目立ってい
ます。
②腸チフスとパラチフス
腸チフスはチフス菌、パラチフスはパラチフス菌によっておこる全身性感染症です。
どちらも患者の便や汚染された食品、汚染された水を感染源として経口感染を起こします。
口から入ったチフス菌は小腸に達したあと、小腸粘膜に侵入して粘膜下リンパ節や腸間膜リンパ節で増殖します。
チフス菌はさらにリンパ管を経て血液中に入り菌血症を起こします。
全身倦怠感、食欲不振などの前駆症状をもたらしたのち、悪寒、発熱をきたします。重症の場合は昏睡状態に陥ります。
パラチフスも腸チフスと同様の症状を呈しますが、腸チフスほど重篤にはなりません。
[主な感染症]
食中毒、腸チフス、パラチフスなど
[参考]
サルモネラ属菌では感染しても発症しないで排菌だけが続く場合があります。
また、発症し終わって症状が治まってからも長期にわたって排菌が続く場合があります。
サルモネラの健康保菌者といわれます。
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