感染症のチョコット知識⑫
ビブリオ属が起こす感染症
D.グラム陰性桿菌感染症
c.ビブリオ属が起こす感染症
ビブリオ属(Vibrio)にはヒトに病原性をもたらす多くの種が属しています。なかでも重要なものには
①三類感染症のコレラ(Cholera)を引き起こす
コレラ菌(Vibrio cholerae)、
②感染型食中毒の原因となる腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)
などがあります。
①コレラを起こすコレラ菌
コンマ状にねじれて屈曲したコレラ菌は経口感染後、十二指腸、小腸で増殖します。コレラ菌は酸、熱に弱く55℃、30分の加熱や、ヒトの胃酸に数秒間さらすことにより死滅するといわれています。
海外旅行で、生モノの飲食や酸を中和する胃薬の服用には注意しましょう。
感染者はコレラ菌の産生する外毒素(コレラ毒素:Cholera toxin)によって激しい下痢におそわれ脱水症状を起こします。
[コレラ菌のイメージ図]
コレラ毒素は腸管上皮細胞に作用して電解質とともに多量の水分を放出させるため、便は米のとぎ汁様の下痢便になります。
コレラによる死は脱水によるものなので、初期治療は輸液で水分・電解質の補充を行ないます。
②腸炎ビブリオ
腸炎ビブリオは発育に食塩を必要とするため、病原性好塩菌とも呼ばれ、海水中に生息しています。
腸炎ビブリオに汚染された海水産魚介類を生で食べると、感染型の食中毒を起こします。
食中毒発生件数の最も多い原因菌です。
例年、腸炎ビブリオは大腸菌やサルモネラ菌などと並んで多数の感染者を出しています。
腹痛、下痢、嘔吐を主な症状として発症します。
[主な感染症]
コレラ、食中毒など
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