感染症のチョコット知識⑬
カンピロバクター属、ヘリコバクター属が起こす感染症
D.グラム陰性桿菌感染症
d.カンピロバクター属、ヘリコバクター属が起こす感染症
桿菌の中には菌体がねじれたものがあり、らせん菌(Spiral bacteria)と呼ばれています。
[らせん菌のねじれの比較]
らせん菌に含まれる
①カンピロバクター属と
②ヘリコバクター属は
ビブリオ属より菌体が長く、ねじれも多いがスピロヘータ属よりは短く、菌体はコルクの栓抜き様の運動をしながら泳ぎ、消化管の粘膜など粘度の高い環境に適応しています。
①カンピロバクータ属(Campylobacter)カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)はカンピロバクター腸炎を引き起こします。
本菌は、ニワトリ、ブタ、ヒツジの腸管に常在しています。そのため、調理の不十分な鶏肉や豚肉、動物糞便に汚染された飲料水などで感染します。
[主な感染症]
カンピロバクター腸炎など
②ヘリコバクター属(Helicobacter)ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobacter pylori)はヒトの胃の粘膜に生息しています。
ヘリコバクターピロリ菌の感染によって急性胃炎や慢性活動性胃炎を発症し、放置すると胃潰瘍や十二指腸潰瘍を引き起こします。さらに胃がんの原因にもなると考えられています。
[主な感染症]
急性胃炎、慢性活動性胃炎 など
胃酸(Gastric acid)は胃液に含まれる強い酸性の液で、化学的にはpH1~2の塩酸(HCl)です。
胃酸には2つの大きな働きがあります。
そのひとつは胃内を一定以上の酸性に保ち、食べ物と一緒に取り込まれたいろんな細菌を殺す(殺菌作用)ことです。
もうひとつの胃酸の働きは、胃腺から分泌される不活性のペプシノーゲンをペプシンに活性化することです。
活性化されたペプシンはたんぱく質をペプトンに消化します。
ところで、ピロリ菌は細菌でありながらなぜ強酸性の胃酸に耐えられるのでしょうか。
ピロリ菌はピロリ菌のもつ酵素ウレアーゼ(Urease)によって胃壁にある尿素 CO(NH2)2 を加水分解して二酸化炭素 CO2 とアンモニア NH3に変えてしまいます。
このアンモニアで胃酸を中和してピロリ菌のまわりのpHをほぼ中性に保つことにより、ピロリ菌は胃酸の強酸性から身を守り、生き続けることができるのです。
[なるほど~]
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