感染症のチョコット知識⑯ シゲラ属、エルシニア属、
レジオネラ属、クレブシエラ属が起こす感染症
D.グラム陰性桿菌感染症
h.シゲラ属が起こす感染症.
シゲラ属(Shigella)には、三類感染症、細菌性赤痢(小児の細菌性赤痢の重症型は疫痢)の原因菌として4種の赤痢菌があります。
A群赤痢菌 Shigella dysenteriae
B群赤痢菌 Shigella flexneri
C群赤痢菌 Shigella boydii
D群赤痢菌 Shigella sonnei
赤痢菌は胃酸に抵抗性があり、微量(10~100個)の菌で感染します。感染源は患者の便で、それに汚染された水や食物、または手指が媒介します。
赤痢菌に感染すると赤痢菌は腸管上皮細胞に侵入して細胞の中で増殖し、約48時間の潜伏期間後に発熱と1日数十回にも及ぶ粘血性下痢(血性、膿性)を起こします。多くはしぶり腹(裏急後重)と呼ばれる腹痛の症状が現われます。
[主な感染症]
細菌性赤痢 など
[ 参考 ] ここでアメーバ赤痢は原虫、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)によって引き起こされる赤痢症状を示す感染症です。(五類感染症)
i.エルシニア属が起こす感染症.
エルシニア属(Yersinia)にはペスト菌(Yersinia pestis)が属し、全身性感染症を引き起こします。
ペスト菌はグラム陰性の通性嫌気性桿菌で、腸内細菌科に属し、大きさは0.5~0.8×1.0~3.05µmです。
◎ペスト
ペスト菌をもったネズミから吸血したノミは、ペスト菌を腸管に保有し、このノミを介してヒトに感染したペストは、肺ペスト、腺ペスト、敗血症ペストの3種類に大別されています。(経皮感染、飛沫感染、接触感染)
その致死率は非常に高く(未治療の場合30~60%)、感染すると敗血症を引き起こして全身の皮膚に黒い出血斑が現われることから、「黒死病」とも呼ばれて恐れられています。
感染すると所属リンパ節が腫脹し、疼痛を伴った腺ペストが発症します。さらに、所属リンパ節でペスト菌の増殖を食い止められなかった場合、菌は血液に入り(敗血症)、とくに、肺で増殖した場合肺ペストを起こします。
[主な感染症]
腺ペスト、肺ペスト、敗血症ペスト など
j.レジオネラ属が起こす感染症.
レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)は自然界では淡水や湿った土壌中に生息しています。
人工的な環境では、温泉の泡発生装置やクーラーの冷却塔、噴水、シャワーなどからのレジオネラを含んだ水がエアロゾル(霧、しぶき)となって空気中に散布され、ヒトがそれを吸入したときに経気道空気感染します。
[主な感染症]
レジオネラ肺炎 など
k.クレブシエラ属が起こす感染症.
クレブシエラ属(Klebsiella)の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)は腸内細菌の一つで免疫の低下したヒトに感染して、肺炎や尿路感染症、敗血症などを引き起こします。
[主な感染症]
大葉性肺炎、尿路感染症など
-16-