感染症のチョコット知識㉔ 肝炎ウイルス が起こす感染症
(f)ウイルスによる感染症その4
細菌 マイコプラズマ リケッチア クラミジア ウイルスの特徴
マイコプラズマ、リケッチア、クラミジアは細菌とウイルスの中間体ですが、
細胞をもち、DNAが遺伝情報の担体なので「細菌」に分類されています。
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e.肝炎ウイルスが起こす感染症(DNA,RNAウイルス)
肝臓の病気の原因として、ウイルス、薬物、アルコール、免疫異常や代謝異常などが代表的なものとしてあげられます。
その症状は、自覚的には食欲不振、全身倦怠感など、他覚的には肝腫大、黄疸、腹水、浮腫などがあります。
肝臓の病気の終着は肝硬変で、肝がんの合併も少なくありません。
なかでも、
ウイルスが肝細胞内で増殖することによって発症する急性および慢性の炎症はウイルス性肝炎(viral hepatitis)、
肝細胞を標的細胞として感染するウイルスは肝炎ウイルス(hepatitis viruses)とよばれています。
ウイルス性肝炎には、少なくとも、A、B、C,D、E型の5種類があります。 これらのうち、
A、E型は主として経口的に感染し、散発性あるいは流行性の肝炎を起こし、通常は一過性の感染で終わります。 一方、
B、C、D型は、血液や体液を介して感染し、一過性感染のほかに、持続感染を起こします。 とくに、
B型とC型は慢性肝炎、さらには、肝硬変、肝がんの原因になります。
日本人の場合、A型、B型、C型ウイルスによる肝炎が大部分を占めています。
これらのウイルスによる肝炎はそれぞれ臨床的にはほとんど区別できません。いずれも発熱と食欲不振、肝機能の障害を伴います。
しかし、微妙に相違点はあります。
A型肝炎は流行性肝炎ともいわれ、A型肝炎ウイルス(HAV:Hepatitis A virus)に感染しても慢性肝炎に移行することもなく、比較的治癒しやすい肝炎です。
A型肝炎の主な感染ルートはHAVに汚染された生の貝類などを食べることで、感染約4週間後に発熱、倦怠感、食欲の低下、吐き気などの不快な症状が現われます。通常、1~2か月で治癒し、慢性化することはありません。
これに対して、B型肝炎ウイルス(HBV:Hepatitis B virus)やC型肝炎ウイルス(HCV:Hepatitis C virus)に感染した場合は治りにくく、また慢性化しやすく、しかも慢性肝炎の約10%は肝硬変に進み、その半数は肝がんになるといわれています。
さらに、急激に悪化すると劇症肝炎を引き起こし、死に至ることもあります。
B型肝炎の主なルートはHBVに汚染された血液の輸血、汚染された血液からつくられた血液製剤の使用、感染者との性交、注射器、ハリ治療、刺青など。このほかに、胎盤を通じての胎児への母児感染も多くみられます。
B型肝炎の症状としては発熱はあまりなく、また、A型肝炎の症状より全体的にやや軽めです。しかし、慢性肝炎を発症すると、慢性肝炎は自覚症状に乏しいが、活動期には全身倦怠感、食欲不振,黄疸などがでてきます。肝硬変に進むと肝機能が著しく障害され、黄疸、手掌紅斑、クモ状血管腫、食道静脈瘤、腹水、出血傾向、肝性脳症など重篤な症状が現われます。
B型肝炎ウイルスは感染すると肝臓で大量に増殖します。このウイルスは二重構造をしていて中心の核にはHBe(Hepatitis B [early])抗原およびHBc(Hepatitis B core)抗原、その表面にはHBs(Hepatitis B surface)抗原があります。
HBs抗原と抗体から、B型肝炎ウイルスに感染しているかどうかを調べることができます。
HBs抗原が陽性(+)ならばB型肝炎ウイルスに感染中を意味し、その人の血液は感染力があります。
HBs抗体が陽性(+)の場合は以前にB型肝炎ウイルスに感染したことを示し、現在はその人の体内にはウイルスはいないので感染力はありません。HBs抗原が陽性(+)のときはさらにHBe抗原・抗体の検査をします。
HBe抗原が陽性(+)の場合はその人の血液の感染力は強く(HBs抗原の1億倍)、HBe抗体が陽性(+)の場合はやや血液の感染力は弱いと考えられます。
C型肝炎の主な感染ルートは、HCVに汚染された血液の輸血、汚染された血液からつくられた血液製剤の使用、注射器、ハリ治療、刺青などです。性交による感染はほとんどありません。
C型肝炎は2~16週間の潜伏期ののち発症しますが、一般に軽症です。しかし、自然治癒はありません。高率に持続感染することが特徴です。急性肝炎の75~85%が慢性肝炎に移行し、平均20年で10~16%が肝硬変に、肝硬変はさらに、年に5%以上が肝がんになるといわれています。
C型肝炎の症状は倦怠感、食欲の低下、吐き気。A型肝炎の症状より全体的にずっと軽めです。
C型肝炎の治療
①HCVを排除する治療
☆ | インターフェロン(Interferon) |
☆ | ペグインターフェロン(PEG Interferon) |
☆ | リバビリン(Ribavirin) |
☆ ハーボニー配合錠(レジパスビル、ソホスブビル)
などの投与。
②C型肝炎の進行を遅らせる治療
☆ | インターフェロン少量長期投与 |
ウイルスを完全に排除する場合にはインターフェロンを一定の量を期間を限って投与しますが、病気進行を遅くする治療の場合には少量を長期にわたって投与します。 | |
☆ | グリチルリチン、ウルソデオキシコール酸、 小柴胡湯、緑茶 |
これらは肝臓を保護する働きがあり、肝炎の炎症を抑えることによって病気の進行を遅らせる効果が期待できます。 | |
☆ | 瀉血 |
C型肝炎になると肝臓に鉄分がたまるようになります。この鉄が増えると炎症が強くなり悪化するため、血液を取って捨てることをくり返し、鉄を減らします(除鉄療法)。同時に鉄分の多い食事も控えます(鉄制限食)。 |
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結局! 薬局! 花野井薬局!
除鉄療法と鉄制限食
ウイルス性肝炎を含む肝炎では肝臓の細胞に鉄分が蓄積します。これは,ウイルスなどにより傷ついた肝細胞を、免疫機能の働きで排除しようとする自衛手段です。つまり、肝細胞内の鉄分が活性酸素を細胞内に呼び込んで傷ついた細胞に細胞死(アポトーシス)を起こさせます。こうすると、傷ついた肝細胞は排除されます。
しかし、肝炎ではこれらの細胞死が過剰となり、放っておくと肝硬変を引き起こします。これを食い止めるためには瀉血や鉄制限食などにより人為的に鉄欠乏状態にする必要があります。
すでに鉄分が肝細胞に過剰に蓄積されている場合には、早急に鉄分を消費させる必要があります。このとき、瀉血(人体の血液を体外部に出すこと)によって人為的に貧血状態を引き起こし、鉄分を主にヘモグロビン合成で消費させます。これが除鉄療法といわれる治療法です。とくに、インターフェロンの効きにくいC型肝炎では除鉄療法の効果が期待されています。
また、鉄制限食の場合、鉄分の多い食品として、ほうれん草や海苔、納豆、はまぐり、あさり、しじみ、レバー、ウコン、クロレラなどがあげられますが、C型肝炎のひとはこれらを含む食事にはとくに気をつけましょう。
肝炎のひとは
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E型肝炎の症状はA型肝炎に類似しています。
近年日本でもシカ、イノシシなどの野生動物にE型肝炎ウイルス(HEV:HepatitisE virus)が定着しており、これら動物の生刺し、レバ刺しなどによる発生が認められています。
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この度!地下足袋!リンクの旅へどうぞ~
花野井薬局プライベートノート「肝臓のチョコット知識」で詳しく紹介しております。
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[主な感染症]
A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、E型肝炎 など
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