抗生物質のチョコット知識⑤
抗生物質の作用機序
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ヒト、真菌、細菌の細胞
動物(ヒト)の細胞:細胞壁はないが核膜はある(真核生物)
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植物(真菌)の細胞:細胞壁も核膜もある(真核生物)
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植物(細菌)の細胞:細胞壁はあるが核膜はない(原核生物)
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細胞壁合成阻害剤
細菌は細胞壁、ヒトの細胞は細胞質膜で
細胞の形を保っています
↓
細胞壁合成阻害剤を投与
↓
細菌の細胞壁は壊れるので細菌は破裂死
しかし、ヒトの細胞は細胞壁がないので壊れません
↓
細菌は死滅するが
ヒトの細胞にはあまり影響はありません
↓
これが、細胞壁合成阻害剤抗生物質の
殺菌メカニズムです
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細胞質膜機能阻害剤
細胞質膜機能阻害剤を投与
↓
細菌の細胞質膜のリポ多糖およびリン脂質に障害
↓
細菌の細胞質膜の選択透過性が変化
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細菌は細胞内成分を放出して死滅
↓
これが、細胞質膜機能阻害剤抗生物質の
殺菌メカニズムです
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たんぱく合成阻害剤
たんぱく合成を行なう場所リボゾーム(r-RNA)の形は
ヒトと細菌とでは違います
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細菌のたんぱく合成を阻害する薬剤を投与
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細菌のリボゾームに作用
↓
細菌のリボゾームの働きが止まる
↓
細菌のたんぱく合成停止
↓
細菌は分裂、増殖不能
↓
細菌のたんぱく合成を阻止
ヒトのたんぱく合成には影響はありません
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これが、たんぱく合成阻害剤抗生物質の
静菌、殺菌メカニズムです
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核酸合成阻害剤
細菌の核酸合成を阻害する薬剤を投与
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細菌のデオキシリボ核酸(DNA)の合成(複製)や
リボ核酸(RNA)の合成過程を阻害
↓
細菌の遺伝情報が伝わらない
↓
細菌のたんぱく合成が停止
↓
細菌は分裂、増殖不能
↓
これが、核酸合成阻害剤抗生物質の
静菌、殺菌メカニズムです
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葉酸合成阻害剤
葉酸は核酸代謝には必須です
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葉酸合成阻害剤を投与
↓
葉酸構成成分のパラアミノ安息香酸(PABA)と
葉酸合成阻害剤の化学構造が似ている
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競合
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細菌核酸の生合成阻害
↓
細菌のたんぱく合成が停止
↓
細菌は分裂、増殖不能
↓
ヒトでも葉酸は必須のビタミンですが食事から得られます
細菌に対して葉酸欠乏は選択毒性になります
↓
これが、葉酸合成阻害剤抗生物質の
静菌メカニズムです
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結局! 薬局! 花野井薬局!
抗生物質の殺菌作用 : 分裂、増殖中の細菌を殺す作用
抗生物質の静菌作用 : 分裂、増殖中の細菌の
発育速度のみ抑える作用
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抗生物質はミリグラム(mg)単位で投与され、血液に入ると、ガンマ-(mcg/ml)単位で各組織に移行します。(組織内濃度)
そこで、感受性のある病原菌と接触すると、発育を阻止したり、殺滅したりします。
また、その後抗生物質は肝臓で少しは分解されますが、大部分は分解されずに0~5%は胆汁中に、 95%以上は尿と一緒に腎臓から排泄されます。(抗生物質の種類や個体差により組織内濃度や胆汁、乳汁中への移行または尿中排泄率などは異なります。)
この場合も、抗生物質は胆のう胆道の病原菌や腎、膀胱、尿道などの泌尿器科領域の病原菌に抗菌力を示し治療に役立ちます。
しかし、いかに抗菌力があり、病巣への移行もすぐれている抗生物質であっても、ヒト(動物)の細胞や組織器官などに何らかの悪影響を及ぼすもの(副作用)であるなら薬剤として安全に投与できません。 とくにこれらの抗生物質は毒と薬を合わせもつ代表的なものといわれています。
このほか、経口投与される抗生物質には悪心、嘔吐。 サイクロセリンには精神神経症状。 全ての抗生物質に考えられる胎児への影響(催奇形性の問題)など。
また、二次的なものとしてビタミン欠乏症、および菌交代現象ならびに菌交代症なども考えられます。
抗生物質は病原菌に対する抗菌力、投与後の血中濃度(ヒトでは組織内濃度は一部を除いて測定不能のため血中濃度から推測)、胆汁中濃度、乳汁中濃度、尿中排泄率あるいは副作用などの基礎的なものを総合して臨床に応用されています。
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