肝臓のチョコット知識⑥
肝細胞の障害検査
Ⅳ.肝疾患と検査
(1)肝細胞の障害を調べる検査
これは、血液中のASTとALTという酵素の量から肝臓を構成する細胞(肝実質細胞)の障害の有無を調べるために行われます。
AST(Aspartate amino transferase)とALT(Alanine amino transferase)はともに肝臓の細胞の中に含まれる酵素の一つです。
ASTは肝臓のほかに心筋や骨格筋などにも含まれているので、心筋梗塞などの心臓の病気、筋ジストロフィーや筋炎などの骨格筋の病気でも異常な数値を示します。
一方、ALTは肝細胞の中だけにある酵素です。AST、ALTとも人体を構成するアミノ酸(グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニンなど)の変換に関与している酵素で、ふだんはほとんど血中には見られません。
AST=GOT ALT=GPT
しかし、肝細胞に何らかの障害が生じると、細胞を包む細胞膜の機能が低下(細胞膜の破壊)して、中の酵素が血液中に漏れ出してきま。
この血液中に漏れ出した酵素の量はほぼ障害のある細胞の数と比例します。
したがって、ASTとALTの値を測定すれば、どの程度、肝細胞に障害があるかがわかります。
基準値は、 AST 1~35単位
ALT 5~40単位 です。
AST、ALTの著しい上昇が見られるのは急性肝炎で、500単位ときには数千単位まではね上がります。慢性肝炎や脂肪肝ではALTがASTを上回り、50~150単位の中等度の上昇を示します。症状が進行して肝硬変になると逆にASTがALTを上回ります。肝がんまで進むとASTがさらに上昇します。(200~300単位)
ALT > AST → 慢性肝炎、脂肪肝 など
AST > ALT → 肝硬変、肝がん、心筋梗塞 など
また、心筋梗塞ではASTは上昇するが狭心症では変化しません。これによって両疾患を判別します。
このほか、細胞が破壊されると血液中に流れ込む性質をもった酵素にLDH(乳酸脱水素酵素:基準値 50~400単位)、アルドラーゼ、ICDH(イソクエン酸脱水素酵素)などがありますが、AST、ALTほど鋭敏ではなく重要性も少ないといわれています。
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