脳内神経伝達物質のチョコット知識④
主な脳内神経伝達物質
主な神経伝達物質
主な神経伝達物質には、次のようなものがあります。
*アミノ酸類
〇グルタミン酸(興奮性の神経伝達物質)
〇アスパラギン酸(興奮性の神経伝達物質)
〇γーアミノ酪酸(ギャバ:抑制性の神経伝達物質)
〇グリシン(抑制性の神経伝達物質)
*モノアミン類
◎カテコールアミン類
〇ドーパミン(興奮性の神経伝達物質)
〇ノルアドレナリン(興奮性の神経伝達物質)
〇アドレナリン(興奮性の神経伝達物質 恐怖、やる気に関係)
◎インドールアミン
〇セロトニン(調整役の神経伝達物質)
〇メラトニン(松果体から分泌される体内時計に関与)
*神経ペプチド(麻薬様物質)
〇エンドルフィン(内在性鎮痛系に関わり、多幸感をもたらす)
〇エンケファリン(内在性鎮痛系に関わり、多幸感をもたらす)
*コリンの酢酸エステル化合物
〇アセチルイコリン(興奮性の神経伝達物質)
1.ドーパミン
(快感のホルモン)
「快感のホルモン」と呼ばれるドーパミンは、A10神経(腹側被蓋野)やA9神経核(黒色緻密部)などが放出する物質で脳内に広く分布し、攻撃性・創造性・統合失調症・パーキンソン病に深く関与している神経伝達物質です。
快感と陶酔感を与える ドーパミンがシナプスに過剰に放出されると統合失調症に特有の症状の幻聴・幻覚・誇大妄想などが現われます。
さらに、 持続的にギャンブルを繰り返す病的賭博や病的性欲亢進(リビドー亢進)などの衝動制御障害を生じることもあります。
反対に、シナプスにドーパミンが不足すると顔の表情がなくなり、自分の意思で自由な筋肉運動ができなくなり、そして、手や足が震えて、前かがみになって足を引きずるようにして歩くパーキンソン病やパーキンソン症候群のような症状が出現します。
また、ドーパミンは、プロラクチン(授乳、不妊症)の分泌量を下げる働きももっています。
2.ノルアドレナリン
(怒りのホルモン)
「怒りのホルモン」と呼ばれるノルアドレナリンは脳内に広く分布していて、うつ・幸福感・不安など情動に深く関与し、目覚めや集中力、積極性を養ったり、痛みをとる働きをする神経伝達物質です。
シナプスにノルアドレナリンが過剰になると興奮状態が続き、ソワソワして落ちつきがなくなり、不安でいても立ってもいられないという、そう病の症状が現われます。
さらに、そう状態では睡眠時間が減り、行動が活発、乱暴となり、他人を攻撃したり怒りっぽくなったりするばかりでなく、性欲が亢進して見境のない性行動(リビドー亢進)に走ります。これは本人が傷つくばかりでなく、まわりにも迷惑をかけます。
反対にシナプスにノルアドレナリンの放出が少ないと強い悲しみや失望感のために喜びがほとんど感じられず、意欲が低下し、あらゆることに興味や関心がなくなってしまう、うつ病になります。
3.セロトニン
(ドーパミンとノルアドレナリンの舵取りホルモン)
セロトニンは脳内に広く分布していて、覚せい・睡眠などの生体リズムや情動に深く関与している神経伝達物質です。
そして、シナプスにセロトニンの量が多すぎると脳が興奮しすぎて(そう状態)平常ではいられなくなり、逆にセロトニンがシナプスに不足すると食欲や性欲は亢進するが、気分は低下(うつ状態)することが知られています。
セロトニンにはドーパミンやノルアドレナリンの働きを調節して不安感をなくし、精神を安定させ、落ち着かせる作用があります。
また、突然心臓がドキドキし、息がつまりそうになり、冷や汗をかき、全身に震えがくるような症状、あるいは原因がないのにいきなり激しい不安感に見舞われる発作、さらに発作時以外でも強い恐怖感に襲われるような意識の現象、などを引き起こすパニック症候群も脳内セロトニンの不足から現われる病状と考えられています。
さらに、歯に根本的な原因がないのにもかかわらず、歯に痛みを感じる難冶性歯痛は”非歯原性歯痛”とも呼ばれ注目され始めていますが、これもセロトニンとノルアドレナリンが何らかの原因で減少した場合に痛みが起こることがある、といわれています。セロトニンとノルアドレナリンには痛みを調節する作用があり、これらの物質を増やす抗うつ薬の治療効果が期待されています。
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ド-パミン、ノルアドレナリン、セロトニンの役割
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