薬物乱用のチョコット知識⑤
幻覚剤 マリファナ コカイン
★ 幻覚剤
幻覚とは白日夢ともいわれ、対象なき知覚であり、異常な夢ともいえるものです。
☆LSD
・わずか0.2㎎ほどの内服でも幻覚を生じる強力幻覚剤です。
・ライ麦の穂に寄生した麦角菌(Claviceps purpurea)の保続性菌体(麦角)から抽出単離されたリゼルグ酸のジエチルアミド誘導体(半合成化合物)です。
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麦角アルカロイド(エルゴタミン、エルゴメトリンなど*
*分娩促進(子宮収縮 陣痛微弱)
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母核(リゼルグ酸)→リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)
. * 幻覚剤
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・LSDにより、視覚、聴覚、時間、空間の感覚や感情などの大脳の作用が狂います。
これは、LSDが眠りを誘う神経ホルモンセロトニンの複雑な誘導体で、
神経ホルモンの作用を左右するために起こる幻覚と考えられています。
☆マリファナ
・マリファナは大麻 Cannabis sativa(とくにインド大麻 C.indica)の花穂や葉を乾燥させたもので、
ハシシュは大麻の雌花の樹脂のみを集め固めたもの(THC含量が最も多い)、
ガンジャは大麻の未熟な花穂および葉から製造されたもの(THC含量がハシシュの次に多い)です。
・テトラヒドロカンナビノール(THC)が主成分(幻覚成分)でアルカロイドではありません。
・吸煙により、酒に酔ったような気分となり、異常あるいは誇張された幸福感と幻覚を体験するといいます。
しかし、
やがて、深い無力感に沈み、昏睡に陥り、目覚めると強い疲労感を覚え、この上ない無気力、怠惰の状態になり、ときに凶暴になるなどの所見もあります。
乱用すると脳に作用して、記憶や学習能力が低下し、知覚を変化させます。
また、大麻には依存性があり、脳に深刻な影響を与え、精神的症状の発現リスクを高めます。
フラッシュバック現象がしばしば起こり、妄想、幻覚、幻影におびえることになります。
大麻にはひどい離脱症状はみられないといわれますが、肉体的には衰弱し、精神的には無頓着、無気力となり、本質的にはその乱用による害は他の幻覚剤と同様とのことです。
幻覚剤はほかに
☆メスカリン「サボテンの一種ペヨーテ」…5mg/kgの内服で、不安や幻覚を生じるとされる。そして、強力な幻視誘発作用を示し、鮮やかな色彩に彩られ、図案化された模様や人物・動物などが登場したりする、という。
☆サイロシビン「シビレタケ属などのキノコ」…脳内神経伝達物質のセロトニンの構造と似ているため脳内でセロトニン受容体と結合して幻覚をひきおこす、という。
☆フェンサイクリジン「PCP」…幻覚作用はあるが、狂暴になったり、自殺願望がでたりすることが多く、長期間使用した者は記憶を失ったり、話したり考えたりすることが難しくなったり、陰鬱になったりする、という。
これらは幻覚作用は強いが覚せい作用は弱いといわれています。
(樹脂大麻、メスカリン、サイロシビンは中等度幻覚剤)
しかし、精神的依存があり、常用は非常に危険です。さらに、幻覚剤を中断しているにもかかわらず、使用時のような幻覚が、まるで映画の早送りの回想シ-ンのように再現してくる「フラッシュバック」も幻覚剤に特有な現象です。
★コカイン(麻薬)
コカインは脳内神経伝達物質であるドーパミンを分泌させるとともに、シナプス間隙のドーパミンの再取り込みを阻害します。その結果、増加したドーパミンがドーパミン受容体と結合することによりA10神経が過剰に活動します。
また、構造式が副交感神経遮断剤のアトロピンに似ていることから交感神経促進剤の覚せい剤と酷似した昂揚作用(アッパー系)も示します。
.南米のコカの葉(Erythroxyron coca)の成分で純粋なものは依存性、毒性とも強い。
・コカイン中毒には精神的依存はあっても身体的依存は低いといわれていますが、慢性中毒症状として消化管障害、不眠、幻覚、精神障害が知られています。
しかし、コカインの使用が断たれると幻覚を生じ、誰かが自分を殺そうとしている、というような被害妄想を生じるので極めて危険です。
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