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『食中毒』について(3) 毒素型食中毒 黄色ブドウ球菌 ボツリヌス菌  感染型食中毒 サルモネラ菌 腸炎ビブリオ 下痢原性大腸菌

 

なにをいまさら、されど 「食中毒」③

 細菌性食中毒には毒素型と感染型があります。


 細菌が飲食物中で産生する毒素による毒素型食中毒は、エンテロトキシン(Enterotoxin)を産生する黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)やボツリヌストキシン(boturinustoxin)を産生するボツリヌス菌(Clostridium botulinum)などによって引き起こされます。

黄色ブドウ球菌

  ブドウ球菌は直径 1µm程度の球菌でブドウの房状に不規則な菌塊をつくって配列しています。自然界に広く分布し、ヒトでは皮膚、鼻咽頭、腸管に常在しています。

 

ブドウ球菌

[ブドウ球菌のイメージ図]


 ブドウ球菌には多くの種がありますが、菌体外酵素のコアグラーゼcoaglaseをもつ(coaglase陽性)菌ともたない(coaglase陰性)菌とがあります。

 黄色ブドウ球菌はブドウ球菌のなかでも最も病原性が強く、食塩耐性があり、乾燥、熱にも比較的強い、といわれています。そして、

 黄色ブドウ球菌は、黄色ブドウ球菌の産生するエンテロトキシン(enterotoxin)腸管毒による毒素型食中毒を引き起こします。
そして、エンテロトキシン腸管毒は100℃、30分の過熱にも耐える耐熱性毒素です。

 

黄色ブドウ球菌食中毒

健常者でも保菌していることが多く、常在菌の1つですが、ひとたび感染が成立すると、菌の毒素、菌体外酵素により種々の病態を引き起こします。

[黄色ブドウ球菌食中毒の起こり方]

 

[黄色ブドウ球菌食中毒の特徴]

ボツリヌス菌

 クロストリジウム属ボツリヌス菌は酸素が存在しているところでは生育できない、大きさ 0.5~2.5*1.6~22.0μm、グラム陽性偏性嫌気性芽胞形成桿菌で、毒素型食中毒の原因菌です。

 

ボツリヌス菌

 [ボツリヌス菌]

 この菌は、土壌、河川、湖沼に分布しています。そして、

 この菌に汚染された食品が十分に処理されないまま缶詰やびん詰、ハム、ソーセージなどに密閉されると、菌が嫌気的条件下に置かれて増殖し、菌の自己融解によって毒素が食品中に放出されます。

ハム

 この毒素はボツリヌストキシン(botulinumtoxin:LD50=0.00005mg/kg)といわれ、破傷風菌毒素とならび、地球上人類の知る最強の毒素です。ただ、

この毒素は、熱に弱く、80℃、30分あるいは、100℃、10分の加熱により、毒性を失います。

ボツリヌス菌食中毒

 ボツリヌス菌に汚染された食品を摂取すると、毒素が小腸で吸収されて血流にのって全身をまわり、運動神経末端と副交感神経末端に作用し、アセチルコリンの分泌を抑制します。その結果、

 筋肉の弛緩性麻痺が現われます。

 ボツリヌス菌摂取後2~40時間の潜伏期を経て、下痢、嘔吐などの胃腸症状や複視、瞳孔散大、眼瞼下垂、嚥下困難などの運動神経麻痺症状を呈します。


通常、発熱や知覚障害はみられず、意識は清明です。

 


[ボツリヌス菌食中毒の特徴]


その他、ボツリヌス菌による病型には、乳児ボツリヌス症、創傷ボツリヌス症、成人腸管ボツリヌス症などがあります。


[予防]

ボツリヌス毒素は熱に弱く、加熱で不活化されるため、食前加熱により、発症予防が可能です。また、

 ハチミツにはボツリヌス菌芽胞が存在する可能性があるので、乳児ボツリヌス症を予防するために、1歳未満の乳児には与えないでください。

.

 感染型食中毒といわれるものは、原因菌の濃厚感染を受けた飲食物(生菌数1万個以上)を摂食し、さらに、腸管内でその細菌がおびただしく増殖する(生菌数10万個以上)ことにより発症する食中毒です。

 原因菌としてはサルモネラのエンテリティディス菌(Salmonella Enteritidis)やネズミチフス菌(Salmonella Typhimurium)、病原性好塩菌ともいわれる  腸炎ビブリオ(Vibrio)、それに私達の仲間のワルの下痢原性大腸菌などがそうです。

 

 サルモネラ属菌

 サルモネラ属菌は、人獣共通病原菌の一つで、ニワトリ、ブタ、ウシなどの家畜、ペットなどの腸管内に広く分布し、周毛性鞭毛をもち、活発に運動します。そして

 サルモネラ属菌は、食細胞(好中球やマクロファージなど)に貪食されても、その細胞内で増殖できる性質をもっています(細胞内寄生性)。

 サルモネラ属には、2000種類以上の細菌が存在しますが、それらには

①非チフス性サルモネラ菌
菌種(エンテリティディス菌:Salmonella Enteritidis、ネズミチフス菌:Salmonella Typhimuriumなど)と

②チフス性サルモネラ菌
腸チフスを起こす腸チフス菌(Salmonella Typhi)、パラチフスを起こすパラチフス菌A(Salmonella Paratyphi A)とがあります。

 
 サルモネラ食中毒はサルモネラ属菌を保有する動物やその排泄物で汚染された食物(鶏卵やニワトリ、七面鳥、カモ、ブタ、ウシなどの肉や牛乳、水など)を介して経口感染します。

 ペット(アメリカミドリガメなど)からの感染もあります。

非チフス性サルモネラ食中毒

 非チフス性サルモネラ菌の多くは感染型食中毒の原因菌です。

 感染型食中毒といわれるものは原因菌の濃厚感染を受けた飲食物(生菌数1万個以上)を摂食し、さらに腸管内でその細菌がおびただしく増殖(生菌数10万個以上)することによって発症する食中毒です。

 

サルモネラ食中毒の起こり方

[サルモネラ属菌食中毒の起こり方]]


 サルモネラ属菌による食中毒は最近、感染力の強いエンテリティディス菌(ゲルトネル菌)に汚染された鶏肉や鶏卵を介した食中毒が増加して問題を起こしています。

 鶏卵の汚染は殻表面だけでなく、白身や黄身にまで及びます。また、

 輸入感染例や汚染輸入食品による感染も増加しています。

 

 

 日本における食中毒発生件数の10~30%がサルモネラ菌が原因とされ、とくに鶏卵に由来する菓子などによる大規模食中毒が目立っています。

[治療]
 軽症の場合は、補液以外の特異的な治療(抗菌薬投与など)は要しません。症状が重い場合はニューキノロン系抗菌薬などを用いることがあります。

 

チフス性サルモネラ感染症

 腸チフスはチフス菌、パラチフスはパラチフス菌によっておこる全身性の感染症(チフス症)です。

 どちらもヒトにのみ病原性を示し、ヒトからヒトへと伝播します。

 患者の便や汚染された食品、汚染された水を感染源として経口感染を起こします。

 口から入った菌は小腸に達したあと、小腸粘膜に侵入して粘膜下リンパ節や腸間膜リンパ節で増殖します。

 菌はさらにリンパ管を経て血液中に入り菌血症を引き起こし、悪寒高熱によって発症します

チフス症

 潜伏期間は1~2週間で、40℃前後の高熱が長期にわたって持続し、皮膚にはバラ疹が現われます。

 菌はマクロファージ内に寄生し、全身に広がり、骨髄、脾臓、胆のう、腸管リンパ組織などを侵し、糞便、尿、唾液に排泄されます。

 全身倦怠感、食欲不振などの前駆症状をもたらしたのち、悪寒、発熱をきたします。

 重症の場合は昏睡状態に陥ります。

 パラチフスも腸チフスと同様の症状を呈しますが、腸チフスほど重篤にはなりません。

[治療]
 治療はニューキノロン系抗菌薬、テトラサイクリン系、セフェム系抗菌薬などが有効です。

[参考]
 サルモネラ属菌では感染しても発症しないで排菌だけが続く場合があります。また、

 発症し終わって症状が治まってからも長期にわたって排菌が続く場合があります。
 サルモネラの健康保菌者といわれます。

[主な感染症]

 食中毒、腸チフス、パラチフスなど

[参考]
 サルモネラ属菌では感染しても発症しないで排菌だけが続く場合があります。また、

発症し終わって症状が治まってからも長期にわたって排菌が続く場合があります。

 サルモネラの健康保菌者といわれます。

 

 

腸炎ビブリオ

 腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)は、通性嫌気性グラム陰性桿菌で、単鞭毛をもち、活発に運動します。

 沿岸域から河口域を中心とした水域の海水中に生息し、発育に塩分を必要とするため、病原性好塩菌(NaClがないと増殖不可能な細菌)とも呼ばれます。

 腸炎ビブリオは、10℃以下では増殖できず、また熱にも弱いため、食品の冷蔵保存や十分な加熱処理によって感染予防が可能です。

 腸炎ビブリオは、小腸の粘膜上皮に定着し、増殖するとき、耐熱性溶血毒(thermostable direct homolysin:TDH)と呼ばれる毒素を産生します。

 この毒素の作用によって腸管上皮細胞が破壊され、腸管内へ粘液、血液が漏出して粘血便性下痢を引き起こします。

腸炎ビブリオ食中毒

 腸炎ビブリオに汚染された魚介類を生食したり、魚介類の調理で汚染された調理器具を介して野菜などが汚染され、その野菜などを生食すると感染し、感染型の食中毒を起こします。
 
 腸炎ビブリオ汚染食品の経口摂取後、8~15時間の潜伏期を経て発症し、水様性下痢、激しい腹痛、嘔吐、発熱などの症状が出現しますが、多くは数日で自然治癒します。



 例年、腸炎ビブリオは大腸菌やサルモネラ菌などと並んで多数の食中毒の感染者を出しています。

[治療]
 治療は脱水症に対して、輸液を行なうとともに、ニューキノロン系やテトラサイクリン系抗菌剤を使用することもあります。

 

 

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