なにをいまさら、されど「食中毒」⑥
動物性自然毒食中毒
ここで自然毒食中毒と有毒な化学物質による化学性食中毒についても触れておきましょう。
自然毒食中毒にはフグを代表とする動物性自然毒食中毒と毒キノコを代表とする植物性自然毒食中毒があります。
Ⅰ、動物性自然毒食中毒
動物性自然毒による食中毒は魚介類に限られています。陸上の動物による食中毒はほとんどありません。
①、フグ中毒
フグの毒は卵巣(マコ)と肝臓(キモ)にとくに多く、中には精巣(シラコ)や皮、肉にも毒のある種類があります。
フグ毒はテトロドトキシン(tetrodotoxin,TTX)といわれ、熱にも強く、
100℃30分煮沸しても20%程度しか破壊されません。また日光にも安定で日干ししても毒性は残ります。
潜伏期は30分〜5時間です。テトロドトキシンは神経毒のため、症状としては舌や唇がしびれ、手足が麻痺し、さらには感覚の麻痺から、最終的には呼吸麻痺で死に至ります。短時間で中毒症状の起こったものほど重症ですが、8時間生命がもてば回復の見込みがあるといわれています。
フグ毒は神経毒です。
神経細胞膜にはNaイオンだけを通過させるNaチャンネルがあります。
このNaチャンネルは通常は閉じていますが刺激されると開く性質を持っています。そして、このNaチャンネルが開くと細胞外にある大量のNaイオンが神経細胞内に流れ込み、その場所だけプラス、マイナスの電位が逆転し、パルス波が発生します。
このパルス波が神経細胞の軸索の表面に沿ってつぎつぎと発生していくのが活動電位(インパルス)です。
フグ毒はナトリウムチャンネルにフタをするように働き、Naイオンが細胞内に入らないようにします。これにより、活動電位はそこで断ち切られ、神経端末には情報を伝えることができません。そのため、体の麻痺が起こり、呼吸麻痺から死に至ることもあります。
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フグの毒化機構
フグ毒は外部起源です。
フグは自分でテトロドトキシンをつくるのではなく、
海水中の微生物のつくったテトロドトキシンを餌などをつうじて、フグが自身の体内に蓄積したものです。
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②、オニカマス中毒
南方毒魚(シガテラ毒魚)の一種。シガテラ毒の中でもシガトキシン(ciguatoxin,CTX)は脂溶性の神経毒です。
一般には食後24時間以内に症状が現われます。唇や顔、手足のしびれ。重症になると言語障害が起きたり、歩行困難になったりします。下痢や嘔吐、倦怠感を伴います。
③、イシナギ中毒
症状は食後30〜1時間、長くて12時間前後までに頭痛、嘔吐、発熱があり、比較的早く回復します。発病後、1〜6日で顔から皮膚がむけはじめ、20〜30日の間には全身の皮膚に及びます。原因としては、イシナギの肝臓には多量のビタミンA(vitamin A)が含まれているので、それが関係するといわれています。
④、バイ中毒
潜伏期は1〜24時間で、症状はめまい、口の渇き、腹痛、視力減退、唇のしびれ、手足の痙攣、言語障害など。重症になると、顔面蒼白を呈し呼吸困難に陥ります。バイ中毒はテトロドトキシンによるものです。
潜伏期24〜48時間ですが長いものでは1週間にも及びます。症状は悪寒、嘔吐があり、ついで皮下出血斑が体のあちこちに出て黄疸も現われます。アサリ毒ベネルピン(venerupin)によるアサリ中毒は一定の時期と限られた地域で発生することから、餌などの環境要因が考えられています。
⑥、その他
ヒメエゾボラ(ツブ)・・・テトラミン(tetramine)
ボウシュウボラ・・・・・・・テトロドトキシン
ムラサキイガイ・・・・・・・ディノフィシストキシン(dinophysistoxin,DTX)
など
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