梅雨に入ると、うっとうしい天気が続きます。
そして、この高温多湿の気候は体力や免疫を低下させることでしょう。
.
.
これに対して、食中毒を起こす細菌にとっては、高温多湿の気候は細菌が最も活発に活動できる絶好の季節で、栄養分や水分などの条件がそろえば1時間に2~3回分裂して増殖を始めます。
そうなると、細菌性の食中毒が発生しやすくなります。
ここで、30分に1回分裂する1個の細菌は10時間後には約100万個の細菌に増殖することができるのです。
.
.
30分に1回分裂する細菌1個の10時間後の細菌数は
.
.
220個、約100万個にもなります。
.
***********************************************************************************************
結局! 薬局! 花野井薬局!
細菌の増殖
1個の細菌が分裂して2個になり、この新生された2個の細菌が次の分裂を始めるまでの時間を世代時間(Generation time)といいます。栄養や培養温度などの環境にもよりますが、通常、最適の条件下では、大腸菌などの普通の細菌の世代時間は20~30分、結核菌の世代時間は4~5時間といわれています。
たとえば世代時間が20分の細菌 a個 は24時間後には理論上 a×272 個 まで増殖するはずです。しかし実際には培地の栄養不足や有害な代謝産物の蓄積などによる環境条件の悪化により、分裂速度が鈍るとともに死滅菌も増加するため、
培地1ml中の生菌数は 多くても 1~5×108 個程度です。
*************************************************************************************
.
細菌性食中毒には感染型と毒素型があります。
細菌が飲食物中で産生する毒素による毒素型食中毒は、エンテロトキシン(Enterotoxin)を産生する黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)やボツリヌストキシン(boturinustoxin)を産生するボツリヌス菌(Clostridium botulinum)などによって引き起こされます。
.
[ブドウ球菌のイメージ図]
.
[黄色ブドウ球菌食中毒の起こり方]
.
.
【 毒素型食中毒の特徴 】
.
感染型食中毒といわれるものは、原因菌の濃厚感染を受けた飲食物(生菌数1万個以上)を摂食し、さらに、腸管内でその細菌がおびただしく増殖する(生菌数10万個以上)ことにより発症する食中毒です。
原因菌としてはサルモネラ属のエンテリティディス菌(Salmonella Enteritidis)やネズミチフス菌(Salmonella Typhimurium)、病原性好塩菌ともいわれる 腸炎ビブリオ(Vibrio)、それに下痢原性大腸菌などがそうです。
.
[サルモネラ菌食中毒の起こり方]
.
【 感染型食中毒の特徴 】
.
[大腸菌 イメージ図]
.
そのほか、細菌性食中毒を起こす細菌としてはセレウス菌(Bacillus cereus)や ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、カンピロバクター(Campylobacter jejuni)などが知られています。
.
.
また、非細菌性急性胃腸炎を引き起こすウイルス性の感染症は年間を通して発生します。
胃腸炎の原因となるウイルスには主にノロウイルス、ロタウイルス、腸管アデノウイルス、コロナウイルスなどがあります。 なかでもノロウイルスは集団発生食中毒の病因ウイルスとしても知られています。
.
ノロウイルス(Norovirus)は胃腸炎を引き起こす病原体です。
ノロウイルスはアルコールや酸に強く、強酸性下で2時間放置しても感染を保持します。また、感染力も強く、ウイルス粒子10~100個の摂取でも感染が成立するといわれています。ヒト以外には感染しません。小腸粘膜でのみ増殖するのでヒトの糞便や嘔吐物が感染源となります。
経口や接触、飛沫によって感染し、12~48時間の潜伏期間ののち、突然の嘔吐、下痢、腹痛などを伴う急性胃腸炎を起こします。
.
ふつう、1~3日で回復しますが、その後、3~7日は糞便中にウイルスを排泄します。10月から4月にかけて二枚貝などの生食によって流行ります。
.
感染経路は基本的に、感染者の便中に排泄されたノロウイルスの直接的あるいは間接的な経口感染です。
.
.
飲食物からの感染(ウイルス性食中毒)は、
.
①ウイルスを含む食材や飲料水を生のまま、あるいは十分に加熱せずに食べた場合、
②ウイルスに汚染された調理台や調理器具などを使ったり、感染者が十分に手を洗わずに調理することによって、二次的に汚染された食品を食べた場合、に起こります。
.
ヒトからヒトへの二次感染(感染性胃腸炎)は、
.
①感染者の便や嘔吐物およびそれらに汚染された器物や衣類に触れた手指を介して、ノロウイルスが他者に伝播し、最終的に経口感染する場合(接触感染)、
②感染者の便や嘔吐物が周囲に飛散し、間近な場所でその飛沫を吸入し、最終的に経口感染する場合(飛沫感染)、
③感染者の便や嘔吐物が乾燥し、ウイルスの付着した小粒子(塵埃)が飛沫となって空気中に舞い上がって漂い、それを離れた場所で吸入し、最終的に経口感染する場合(空気感染)、に起こります。
.
ノロウイルス感染症の症状としては嘔吐(突発性)、下痢(水様性便)が主症状であり、ときに腹痛、発熱を伴います。
.
潜伏期は1~2日とされ、一般に症状は軽く、不顕性感染もみられますが、乳幼児や高齢者では重症化することがあります(とくに、脱水症状。さらに、高齢者では嘔吐物による窒息と嚥下性肺炎を起こしやすい)。症状が改善した後も、少なくとも1週間はノロウイルスの排泄が続き、ウイルスは人体外環境で長く生存します。
.
細菌性食中毒が夏季に多いのに対して、ノロウイルス食中毒は冬季に多く発生し、とくに12月から翌年の1月にピークを示します。
原因食品としては生カキが最も多いのですが、汚染された他の飲食物によっても起こります。
.
.
感染者の糞便中に排泄されたノロウイルスは、下水処理施設をすり抜けて水域を汚染し、そこに生息するカキなどの二枚貝に取り込まれ、その中腸腺に蓄積されます(ノロウイルスは、貝の体内では増殖はしません)。
カキや汚染食品を介して感染したノロウイルスは感染者の小腸で増殖して急性の胃腸炎を起こします。
.
ノロウイルス食中毒の予防は、“しっかり手洗い”と“しっかり加熱”です。
.
調理前、食事前、用便後は、流水と石けんで手をよく洗い(アルコールの消毒効果は低いとされています)、
カキなどの二枚貝は十分(中心温度が85~90度で90秒以上)加熱し、調理器具は熱湯消毒か、次亜塩素酸ナトリウムで消毒します。
二次感染は、便・嘔吐物(とくに、突発性の嘔吐による吐物は予想以上に飛散します)を“素早く”、“適切に処理する”ことによって予防します。
.
ノロウイルスの治療
.
ノロウイルスの潜伏期間は24~48時間と短く、主な症状は吐き気、嘔吐および下痢です。腹痛、頭痛、発熱などもみられます。嘔吐.下痢に至っては一日数回から十回以上のときもあるため、脱水症対策として十分な水分の補給が大切です。
そして、早めに医療機関を受診してください。
特効薬はないといわれています。
抗生物質といえどもウイルスに対しては効果はありません。下痢の期間を遷延させるのでノロウイルス感染症には抗生物質を通常は使用しないとのことです。
ただ、漢方薬の五苓散(経口や注腸)がノロウイルス感染症に効果が期待できるというお話はあります。
.
.
.
.
ロタウイルス(Rotavirus)は経口感染によってヒトに感染し、下痢症を起こす原因ウイルスです。
.
便中に排泄されたロタウイルスが経口的に侵入し、小腸に到達すると絨毛突起先端の上皮細胞に感染し、増殖します。
増殖力、感染力とも強く、ウイルス粒子が糞便1gあたり1000億個に達することもあります。 一方、10個以下で感染が成立することもあります。
感染によって絨毛上皮が破壊されるため、小腸での吸収が障害され下痢を起こします。しかし、体液性免疫と細胞性免疫との連携プレーによってウイルスおよび感染細胞が除去され治癒します。
.
[体液性免疫(抗体)]
.
[細胞性免疫]
.
破壊された小腸上皮細胞は約一週間で修復されます。
.
ロタウイルスの治療
ロタウイルスに対する抗ウイルス薬はありません。脱水症を起こさない治療(経口補液、静脈輸液など)が中心になります。
.
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
この度!地下足袋!リンクの旅へどうぞ~
花野井薬局健康コラム「なにをいまさら、されど『食中毒』」
ご覧ください。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
.